日本辺境論 - 「日本文化とは何か」というエンドレスの問い
世界の中心である世界標準から真似たり改良するテクニックを身に着ける一方で、世界標準を自ら設定する思想を捨て去った日本の在りのままの姿が見えました。
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日本文化というのはどこかに原点や祖形があるわけではなく、「日本文化とは何か」というエンドレスの問いのかたちでしか存在しません。 - pp23
著者の内田 樹さんがおっしゃるとおり、日本は日本人によって「こういう国だ」と名乗りでてから合意を得た上で始まったのではないので、知的努力の到達点に過ぎない。それも、死活的に重要であることを確信できないまま現在に至っていることが伺えます。
主体性のある志を抱くには、辺境人であることを解除して外部を求める志だけを取り出すだけだと内田さんは訴えていますが、日本人のアイデンティティを模索することの楽しみを逆手にとって、歴史の偉人たちのように味わうことも、また美しいのだと認識することも大事だと思いました。
昨日更新された内田さんのブログより。
『日本辺境論』では、辺境人としての日本人の思考と行動の特殊性を列挙した上で、それが「手が着けられないもの」か「補正が効きそうなもの」か「伸びしろのあるもの」かをプラティカルな観点から考察したのである。人間の本質的欠点は決して治らない。その欠点そのものがその人のオリジナリティ、唯一無二性を基礎づけているからである。
via. オピニオン・リーダーなんかになりたくない (内田樹の研究室)
本書にも散見されていますが、いわゆる日本人論は既に世に出回っていて、本書は新しいことを提唱しているわけでもない、にも関わらず、習得よりも考えることや書くこと、そして本を読むことの楽しさを演出している一冊でもありました。それは、内田さんも一人の辺境人として楽しまれている裏返しでもあるような気がしました。