翻訳を担当された id:wayaguchi より日本語版「How to Change the World 〜チェンジ・マネジメント3.0〜」の献本をいただきました。ありがとうございます。
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本書のキーワードとなっている「チェンジ・マネジメント(日本語では「変革管理」と訳されています)」は捉え方によって様々な場面で応用することができます。ビジネスの観点においては新たなビジネス・プロセスや技術革新に値します。社会的な観点からは公共施策や法律などが含まれます。ただ、社会や組織における改善や変革において最も難しいのは、他人の行動を変えることに変わりはありません。そもそも社会ネットワークは個人とその相互作用がすべてです。であれば、環境を変化させることができれば、人を変えることができるのかも?そんなヒントが紹介されていました。
チェンジ・マネジメント3.0のスーパーモデル
- システムとダンスする―PDCAモデルを活用
- 人々のことを気にかける―ADKARモデルを活用
- ネットワークを刺激する―普及曲線モデルを活用
- 環境を変える―5つのIのモデルを活用
カーネギーの「人を動かす」でも記載がありましたが、人々は変化の必要性を納得しない限り、その変化に対抗することは目に見えています。日本人は変化を嫌う人種である、と良く言われたものです。人を動かすためには何よりも目標。何のために変化を起こし、何を達成したいのかを明確にすることが必要不可欠であると著者は訴えます。
『目的の定義をアクティビティやメソッドの観点から行わないことが重要だ。どうすれば人生が誰にとっても良くなるかを常に直接結びつけて考えなければならない。』- pp32
著者はアジャイル・マネージャーとして活躍されていますが、アジャイル開発プロセスの推進に伴う(組織内に)変化を起こすということに着眼点を置いて、社会変革に議論を発展させたのは驚きです。だからか、ユーザエクスペリエンスに携わっている身としてはとても親近感を感じます。この引用からも、人間中心設計(HCD)が最も陥りやすい状況であると認識しました。
ユーザエクスペリエンス・デザインとチェンジ・マネジメントはシナジー効果が期待されます。先ずは主役が置かれているシチュエーション。組織に対して UX デサインの重要性と意味を理解してもらう必要があります。つまりこれは、組織における UX デザインの IQ を高める(変える)ことに等しいと言えます。
ほかにも、必要性の理解に求められる緊急度、他者とのコラボレーション、ビジョンの立案、共通認識を促すコミュニケーション、変化につなげる行動、そして組織に根付かせるための補強と評価。ひとつひとつ説明しだすときりがありませんが、はてなの近藤社長が言うように、変化を通じて個人としての存在意義を高めていく上では、この本はとても訳に立つことと思います。オススメです。
『どんな世界も自分が何かを始める前は自分が居ない状態で回っています。しかも、そこそこちゃんと回っているのです。何か新しい事を始める時、「その世界はあなた無しでもちゃんと回っている」状態から出発する事を忘れないでください。極端な話、「自分が生まれなくても地球は問題なく回っていた」のです。新しい領域に挑戦すると言う事は、自分が不必要な状態から、自分が必要とされる状態への変化を、自分の力で起こすという事なのです。』- はてなに入った技術者の皆さんへ