『The Next Context Conference 2011 Fall』の興奮冷めやまぬまま、LUXrco の Janice Fraser さんをゲストにお招きして「第7回 ShibuyaUX Meeting」を開催しました。恐らく、ShibuyaUX の過去最大のイベントとなりました。
前回の ShibuyaUX で得られた気づきやフィードバックに触れていただきながらシリコンバレー流サービス設計についてご紹介いただき、後半では参加者とのインタラクティブなセッションが繰り広げられました。今回は前半にフォーカスをあてます。「自ら Lean Startup / Lean UX を実践する前に(リスクを最小限に抑えるために)具体的な実例について知りたい」という我々日本人ならではの本質的な要求に対して Janice さんは「9 Principles of Lean UX(Lean UX の9つの原則)そのものが1つの事例」だと話します。Lean Startup / Lean UX は「失敗しない」ということを、我々は改めて学ぶことができたと思います。
The 9 Principles of Lean User Experience(Lean UX の9つの原則)
- Design + Product Management + Development = 1 team (デザイナー+プロダクトマネージャー+開発者=1チーム)
- Externalize!(外部化、客観的観測)
- Goal-driven & outcome-focused(目的駆動・結果に集中)
- Repeatable & routinized(繰り返し可能なルーチン)
- FLOW: think -> make -> check(フロー:考える/作る/検証する)
- Focus on solving the right problem(正しい課題に集中する)
- Generate many options & decide quickly what to pursue(オプションを沢山考え、正しい物を早く決める)
- Recognize hypothesis & validate them(過程を作り検証する)
- Research with users is the best source of information & inspiration(ユーザとともにリサーチをするのがベスト)
僕はこのなかでも(1)に強い共感と学びがありました。
Design + Product Management + Development = 1 team
スタートアップに限らず UX 主体のプロダクトマネジメントチームはデザイナー+プロダクトマネージャー+デベロッパー(開発者)が1つのチームとして働きます。この体制は Tim McCoy という人が考案したアイディアで"Product Stewardship"と名付けられています。デザイナーはカスタマー・デベロップメント、プロダクトマネージャーはビジネス・デベロップメント、デベロッパーはシステムやアプリケーション・デベロップメントと言うように、それぞれがそれぞれの開発の責任を持って行う体制です。
3者間の関係を図式に表すとプロペラのような形状をしており、Janice さんは『きっとこれは「早く進め!」という意味が込められていますね。』と笑みを浮かべます。UX デザイナーは他の誰よりもユーザを理解している必要があり、ユーザと共感することが役割です。従来、特にウォーターフォール型のデベロップメントではプロダクトマネージャーからの要望を受け入れるだけだったが、本来はデベロッパーがどういう技術を使うのか、ユーザのペイン(不満)をどう解消するのか、を検証していかなければなりません。僕自身も仕事場で「Why?」を繰り返した際に辿り着く答えは、この体制と役割でした。
プロダクトマネージャー(図では Business Stakeholder)は達成すべきビジネス上の目的を掲げることから始まり、最終的な意思決定もこの人が行います。マネタイズする各種ポイントはどこにあるのかを考え、ビジネススキームの全体を設計するケースが多いと思いますが、エンドユーザとのインファーフェースやテクノロジーが限られてしまうことから、この時点ではビジネスゴールのみです。イノベーションのボトルネックはビジネスサイドに存在します。
一方で UX デザイナーはプロダクトマネージャーと二人三脚でターゲットユーザを特定し、ビジネスゴールを達成するための UX ストーリーマッピングを行います。前述したビジネススキームはプロダクトマネージャーオンリーではなく、UX デザイナー(ユーザ)と共に提供する価値と体験を定義、仮説検証していきます。デベロッパー(Integrated Team)へのフィードバックも忘れてはいけません。描いた提供価値の Feasibility Check(技術の適応と実現性の検証)を UX デザイナーと行い、天井を高くする役割があります。イノベーションはこのフェーズで起こるかが決まる、と Janice さんは話します。
LUXr Bento Box
懇親会の場ではなんと Janice さんよりサプライズギフトをいただきました。まだ正式には公開されていないため詳細は開示できませんが、Janice さんが提唱する"Lean Startup / Lean UX"のスターターキットです。"LUXr Bento Box"と呼ばれるその商品は Janice さんご本人が体験した(日本の)お弁当の蓋を開けるときのワクワク感にちなんで名づけられています。日本の伝統的な文化が由来となっているだけに、親近感が湧いてきます。
LUXr Bento Box とあわせてネット上に E-Learning のようなラーニングシステムが同時に提供されており、ワークショップ形式で1時間かけて網羅できる内容となっています。またこのブログでも取り上げますが、ShibuyaUX でも LUXr Bento Box ワークショップを近々開催する予定です。
数々のインスピレーションやヒントを我々に与えてくださった、Janice さん(とアレンジいただいた Jason さん)に感謝。"Answer is in your organization(答えはあなたの組織の中にある)."