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ザッポスの奇跡 The Zappos Miracles - アマゾンが屈したザッポスの新流通戦略とは

「感動のサービス」といえばディズニーを筆頭として挙げられるエンターテイメント業界やリッツ・カールトンなどのホスピタリティ業界の領域で多く語られてきましたが、一方でインターネットを始めとする流通業界は遅れを取っていると思います。僕自身もユーザエクスピリエンス(UX)にフォーカスした業務を遂行しているため、日々痛感しています。そんな最中、企業文化に UX を浸透させている会社がありました。米フォーチュン誌で「今最も働きたい会社100」にも選出された靴を専門とする ECサイトを運営している「Zappos(ザッポス)」です。

ザッポスの奇跡 The Zappos Miracles―アマゾンが屈したザッポスの新流通戦略とはザッポスの奇跡 The Zappos Miracles―アマゾンが屈したザッポスの新流通戦略とは
石塚 しのぶ

東京図書出版会 2009-11-10
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CEO のトニーの合言葉である「Delivering Happiness(幸せを届ける)」は UX そのものを体現している(もはや拡張している)といっても過言ではないと思います。1日の時間のうち10%でも「社員と顧客に幸せを届ける」、その研究にトニー自らが心を傾け「企業とはこういうもの」という既成概念に挑戦し続け、企業と社員、企業と顧客、企業と社会の三位一体の関係においてこれからの企業の「あるべき姿」を実践している姿勢が伺えます。


過去5年間の売り上げで1300%の成長、リピート顧客率75%、創業10年足らずで年商10億ドル突破という驚きの成果をあげているザッポスですが、本書ではそんなザッポスが企業理念として掲げている「10のコア・バリュー」にも挙げられている様々な「WOW(驚嘆)ストーリー」が紹介されています。マスメディア広告より顧客サービスに投資したり、社員に対して個々人が責任をまっとうする「参加のプラットフォーム」を与えたりと、「ワーク・ライフ・バランスなんてナンセンス」と言い切る、トニーの哲学が経営にダイレクトに反映されている気がします。

社員は徹底したエンパワーメントとアカウンタビリティに基づく自己管理に任されていて、だからこそ PEC(パーソナルかつエモーショナルなつながり)をキーワードに「何を」ではなく、「どのように」商品を買うのかについて常に考え、サービスを提供しているのだと思いました。根源にあるのは顧客主導型ではなく、個・主導型な企業文化。そして最も優れていると感じたのは通常、定量化することが難しいとされる取り組みですが、ただ感覚的・感情的に取り組むのではなく、可能な限り定量化を行ってその向上を測定する評価を行っていることです。

いままで企業が断念してきた、あるいは重要性を認識しつつも既成概念の下、優先度が低かった「幸せと感じてもらえるサービスの提供」を自ら証明しているザッポス。いま、僕が最も働きたい会社の1つですが、内定率がハーバード大学の合格率よりも圧倒的に低い1%らしいので、ザッポス・カルチャーを組織ではなく個で体現しながらザッポニアン(ザッポスのカルチャーを受け継いでいる人)を目指したいと思います。

「これらすべては、もちろん、かなりお金がかかることです。でも、顧客サービスをないがしろにする余裕は、僕たちにはないのです。」- pp48

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