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ジェフ・ベゾスの手紙から学ぶ「顧客中心思考」

この時期に米AmazonのCEOであるJeff Bezos(ジェフ・ベゾス)が投資家たちに向けて充てる手紙を読むのが毎年好例の楽しみになってきました。今年の手紙では、米Amazon の投資家たちに向けてなぜ、No Profits(無利益)が悪いことではないのかが彼自身の言葉で綴られています。

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先ず驚いたのがこの手紙が投資家たちに充てられた時期です。米Amazon は昨年2012年に約40万ドル(約10%のマーケット・シェア)の資金を失いました。資金を失うことはもちろん投資家たちにとって良いニュースではありません。それでも尚、彼はあくまでも短期決戦ではなく中長期的な「ゲームを遊んでいる」ことに共感してもらえるよう訴えています。そして、今後の先行投資がやがては中長期的なインフラの基盤となり、顧客のロイヤリティーを高めていくことに繋がっていくことへの理解を促しています。

一部抜粋して翻訳していますが、この手紙には何度も「カスタマー・エクスペリエンス」という言葉が言及されています。これほど会社の役員がカスタマーないしはユーザ・エクスペリエンスという言葉を発している様子を僕は見たことも聞いたこともありません。彼こそが顧客思考のエバンジェリスト(先駆者)じゃなかろうか。

"One advantage – perhaps a somewhat subtle one – of a customer-driven focus is that it aids a certain type of proactivity. When we’re at our best, we don’t wait for external pressures. We are internally driven to improve our services, adding benefits and features, before we have to. We lower prices and increase value for customers before we have to. We invent before we have to. These investments are motivated by customer focus rather than by reaction to competition. We think this approach earns more trust with customers and drives rapid improvements in customer experience – importantly – even in those areas where we are already the leader."

『顧客中心であることのアドバンテージはプロアクティブ(積極的)になれたということです。我々が非常にベストな状態であるときに、我々は外部からのプレッシャーを待ってはいません。我々は、利便性の向上や機能の拡充など、サービスをより良くしていくために内部から率先して取り組んでいます。我々は必要とされる前に顧客価値を高め、価格を下げることを試みています。必要とされる前に、新しく創りつづけます。これらの投資は競合優位性を保つためのものではなく、顧客中心思考によって自然に行ってきたものなのです。我々は、この考え方がやがて顧客の信頼を勝ち取り、カスタマーエクスペリエンスにおける迅速な改善を促してくれると期待しています。

"I think long-term thinking squares the circle. Proactively delighting customers earns trust, which earns more business from those customers, even in new business arenas. Take a long-term view, and the interests of customers and shareholders align."

私は中長期的な顧客中心思考はひとつのサイクルを生み出してくれると思っています。積極的に顧客満足度を向上させることによってやがては信頼が生まれ、結果として顧客から新たなビジネスのヒントを得られることになります。中長期的な観点こそ、投資家含め顧客の興味を獲得するために重要だと考えます。』

"As I write this, our recent stock performance has been positive, but we constantly remind ourselves of an important point – as I frequently quote famed investor Benjamin Graham in our employee all-hands meetings – “In the short run, the market is a voting machine but in the long run, it is a weighing machine.” We don’t celebrate a 10% increase in the stock price like we celebrate excellent customer experience. We aren’t 10% smarter when that happens and conversely aren’t 10% dumber when the stock goes the other way. We want to be weighed, and we’re always working to build a heavier company."

『この手紙を書いている最中でも、我々の株は非常にポジティブな動きを見せてくれています。しかし、我々はベンジャミン・グレアムの言葉を忘れてはなりません。「市場は、短期的視点に立った場合には、有価証券の価格を示す投票機のようで、有価証券の価格はその日の人気を反映すると考えていました。しかしながら、長期的視点に立った場合、市場は計量器のようで、有価証券の価格が発行会社の本質的価値又は発行会社の真の価値と合致していく。」我々は例え株価が10%上昇したからといって祝うわけではありません。そのときに10%の成果を出せたかもわかりません。我々はこの計量器の発想のように、より重い会社であるために努力しつづけます。』

褒めるわけではありませんが、米Amazon が他、マイクロソフトやアップル、グーグルやフェイスブックなどの競合よりも一線を引いているのは他の誰よりもオフライン・オンライン問わずより良い顧客体験を提供しているからだと思います。そして、それを経営理念に掲げ実践しつづけるベゾスに対して投資家含め誰もが期待を信頼に変えているのではないでしょうか。もはや彼は顧客だけではなく投資家たちをも驚かせるようなことを日々考えているのかもしれません。

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[手紙全文(英語)]

 

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