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「誰のためのデザイン?」よりも「何のためのデザイン?」

'Without meaning in our lives, life would be pretty meaningless.' - Darius Pocha

生きるための意味が失われていくと、生きていることそのものに意味がなくなってしまう。それは(ユーザ)エクスペリエンス・デザインにおいても同じことが言えると思います。

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優れたユーザエクスペリエンスを実現するために HCD(人間中心設計)への理解を示す企業が増えてきている一方で、手段の目的化という危機に直面してしまっている事態から早急に回避すべきであると考えます。ユーザエクスペリエンス・デザインに携わっている人のバイブルとして親しまれている「誰のためのデザイン?」は我々に顧客中心主義という新たな視点をもたらしてくれました。結果として HCD(人間中心設)が社会的に普及するきっかけにもなりました。ただ、「誰のためのデザイン?(Who)」以前に「何のためのデザイン?(Why?)」、提供する意味や目的ありきで発想しなければ「誰のためのデザイン?」という問いに答えたところで着地すべき結論には至りません。

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デザインの本質的な役割は「問題解決」だと思います。昨今良く耳にする「デザイン・シンキング」も元を正せば問題解決型の「ロジカル・シンキング」のエッセンスを幾分に取り入れています。 


つまり、デザインには「目的」があり、デザインすることそのものに「意味」を見出すのではなく、「意味」があってこそのデザインであることを理解する必要があります。HCD(人間中心設計)だけに留めるのではなく、MCD(Meaning Centered Design:意味中心設計)へのパラダイムシフトを如何に見極めるか、が今後の、ないしは来年のキーファクターになってくると思います。

なぜか。

ペルソナを作って、それからどうするの?」というぼくも参考にさせていただいた実践本がありますが、このフレーズは HCD をプロジェクトに取り入れた際によく直面する場面です。ペルソナはデータを基に作り上げられた架空のユーザ像であり、確かにペルソナを作成すれば冒頭の「誰のためのデザイン?」には答えることができます。ところが、解決したい特定の問題、または特定の人に提供したい価値が不明瞭のままだとこのように手段の目的化によって生じる課題が著しく表面化し始めます。HCD 実践家のエゴによってプロセス主体の発想に陥ってしまうことが原因でもあります。

結果としてプロジェクトを担当しているメンバー含めサービスを利用するユーザさえも満足しないままで終わってしまいます。HCD の本来の役割も果たせなくなり批判の声を浴びるかもしれません。

また、Jump into conclusion(あまり考えもしないですぐに結論を出そうと)するのではなく、解決すべき課題や提供したい価値が正しいのか否か、十分な課題や目的の設定を終えてからどのように解決すべきか、という順序を踏まえて進めていくべきです。そもそもの課題設定が間違っていては効果も見えにくい上に、課題の存在さえ怪しい場合もあります。

以上を踏まえて、「MCD(意味中心設計)を促進させるための3原則」としてまとめてみました。 

  1. Process(過程):解決する前に課題を特定する
  2. People(顧客):誰のためのデザインかを繰り返し問いただし、真実を確かめる
  3. Purpose(目的や意味):ソリューションではなく、最初に掲げた目的にフォーカスする

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