#UXTokyo Jam 2014 -Breaking New Ground of UX in Tokyo-

発足から約3年間、主宰者のひとりとして携わってきた UX Tokyo で初となる大規模イベント「UX Tokyo Jam 2014」を開催致します。「次代のより良いデジタルインフラ構築に貢献する知のネットワークを構築・活性化します」というメッセージと共に、Facebook グループを軸とした勉強会や読書会などを定期的に開催してきました。

IT業界の流れはとてつもなく早いもので、当時は30~40名規模の団体でしたがいまとなっては約1,400名と驚くようなスピードで「ユーザーエクスペリエンス」に関心のある方々が集まるようになりました。この「ユーザーエクスペリエンス(=UX)」という言葉と共に成長してきた UX Tokyo ですが、UX 戦略という言葉にも代表されるように「ユーザーエクスペリエンス(=UX)」は新しいステージを迎えようとしています。だからこそ今、「ユーザーエクスペリエンス(=UX)」を捉え直す必要があるのではないでしょうか。

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そのための対話の場を、「ユーザーエクスペリエンス(=UX)」と共に成長・拡大してきた UX Tokyo が用意させていただきました。次代のより良いデジタルインフラ構築のために、私たちで UX の新しい土台をつくりましょう。当イベントのテーマである「Breaking New Ground of UX in Tokyo」にはそのような意味を込めました。「ユーザーエクスペリエンス(=UX)」という言葉が、ただ消費され、使い古されるだけの言葉にならないように。

新しい「ユーザーエクスペリエンス(=UX)」の幕開けを、日本から。

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UX Tokyo Jam 2014
-Breaking New Ground of UX in Tokyo-

日程:7月26日(土)
時間:12:45~21:00
会場:グリー株式会社 9F(東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー
主催:UX Tokyo
後援:グリー株式会社
スペシャルサポーター:OFFICE DE YASAI
参加チケット:2,000円

12:45~13:15 受付
13:20~13:30 挨拶
13:30~14:15 オープニングキーノート
14:15~18:00 パラレルセッション
18:15~19:00 クロージングキーノート
19:00~21:00 懇親会

オープニングキーノート
前田俊幸(ユーザーリサーチャー / UX Tokyo 主宰)

セッションA-1:Empathy in UX Design
村越悟(グリー株式会社 UXデザイナー)
水野太(UXデザイナー / インフォメーションアーキテクト)
モデレーター:坂田一倫(株式会社コンセントユーザーエクスペリエンスアーキテクト)

セッションB-1:UXデザインのためのマテリアリズム
江口晋太朗(編集者 / ジャーナリスト)
山本郁也(BEENOS 戦略ディレクター)

セッションA-2:Experience Design Out of Screen:これからのエクスペリンスデザイナーの生きる道
児玉哲彦(株式会社アトモスデザイン代表 / デザイナー)

セッションB-2:UX StudyとしてのFeasibility Study
新明智(株式会社ココナラ取締役)

セッションA-3:UXから「生きたUX」へー論から「実践UX」へSHIFTしよう
大隈広郷(デザイン思考研究所☆FUTURES PLACE 代表)

セッションB-3:UX戦略を考えるための本質的ユーザー理解
井登友一(株式会社インフォバーン執行役員京都支社長)

クロージングキーノート
長谷川敦士(株式会社コンセント代表 / インフォメーションアーキテクト)

 

人間中心設計(HCD)におけるマネジメント

HCD(UXD)の価値は、実践を通じて証明しなければならないと思っています。そのためには、戦略など上位にある構想(=無形)を見える化(=有形)し、具体性を与えることで実践に直結するように心掛ける必要があります。

現状課題(=As-Is)からビジョン創造(=To-Be)への展開方法や発想方法についてはこれまでの HCD(UXD)の文脈で多く語られてきました。カスタマージャーニーマップをはじめとするコラボレーティブデザインなど、周囲のステークホルダーをも巻き込んだ共創活動が除々に活発化していくも、意思決定後の計画を他者に任せるも文脈が全く共有されていなかったり、実行性を考慮しない故に当初の構想とはかけ離れたアウトプットになってしまう事態に陥りがちです。

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((c) pennstatenews via Compfight cc)

それだけではもちろん価値創出には繋がりませんし、自己満足状態になってしまっては意味がありません。いくらアイディアが素晴らしくても、エグゼキューション(実行)されなければそのアイディアも無価値に終わってしまいます

はじめに

先日参加した HCD フォーラム内のチュートリアルで、ソシオメディアの篠原さんが担当されたセッション「HCD におけるマネジメント」はその名の通り、HCD(UXD)の組織化を広義/狭義におけるマネジメント観点から先の課題解決に繋がるヒントを多くご紹介いただきました。

イノベーションを導く手法として、ユーザエクスペリエンス・デザイン(UXD)やデザイン思考などに注目が集まっています。しかし、これらの知見やスキルの習得だけでは、組織の目的達成までには至りません。専門性のマスターに加え、各種手法をメソッドとして企業全体やプロジェクトの中に組織化・制度化(Institutionalization)すること、推進のためのリーダーシップ開発や人材育成を行うこと、一連の活動をメトリクスとして管理・運用することなど、「マネジメント」の諸要素こそが重要となります。本チュートリアルでは、「HCDにおけるマネジメント」を遂行するための諸条件とその具体的な実践方法について解説します。

HCD-Net | HCD-Netフォーラム2014 チュートリアル

セッションの冒頭では HCD(UXD)が求められている背景として競争化・グローバル化における経営戦略的観点から1960年代まで遡り、製品を基軸とした戦略的製造体系から体験に重きを置いたエクスペリエンス戦略ありきの製造体系への以降をご紹介いただきました。当ブログでも何度か言及しているコトからモノへのデザイン、製品からサービスへのシフトによって、HCD(UXD)への重要性が社会的に除々に認識されはじめています。スマートグリッド構想やスマートハウスなど、日常生活におけるインフラのスマート化が発展し、特定の分野だけでは完結しない、分野を横断したユーザー起点のサービスが提供されるようになりました。

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((c) T.Shinohara)

理解を示す一方で、経営戦略的観点からの HCD(UXD)のマネジメント体系が組織内に確立されていなれば冒頭の普及活動は一向に進展しません。HCD(UXD)におけるマネジメントは

  • 「プロジェクト」における HCD のマネジメント(=プロジェクト・マネジメント)
  • 「企業経営」における HCD のマネジメント(=経営・マネジメント)

の2つに分類することができると篠原さんは言います。

  1. プロジェクト・マネジメント:HCD(UXD)の推進組織・チーム・諸活動を管理・運営・推進すること
  2. 経営・マネジメント:HCD(UXD)の価値を理解して、HCD(UXD)を経営・組織に導入・定着させること

加えて、組織のヒエラルキー(例:経営層、事業部長、部門長など)と専門用語群のヒエラルキー(例:思想、メソッド、手法など)を軸に組織内に HCD(UXD)を普及させるためのフレームワークの枠組みを紹介していただきました。

  • 経営・マネジメント
  • HCD 基礎力
  • HCD 活用力
  • プロジェクトマネジメント

当ブログでは「HCD 基礎力」「HCD 活用力」に触れていきたいと思います。

HCD 基礎力

ISO で定義されている「人間中心設計(HCD)」は上記で言う思想に該当します。次に各種手法(ツール)の習得です。ペルソナやシナリオなどの代表的なツールに加え、世の中には実に様々な HCD(UXD)を実践する手法が存在します。

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((c) Human-Centered Design Toolkit | IDEO)

忘れてはならないのは、手法はあくまでも点に過ぎないということです。HCD(UXD)の基礎力を司る、最も重要な要素は上記にもリストアップされているような各種手法のメソッド化です。

メソッド化とは、属人性が排除され、ゴールまでの手順が明確になっている道筋とも言い換えることができます。手法を学び、メソッドを学ぶ。またはメソッドを学び、手法を学ぶ。鶏卵論のようにも思われるかもしれませんが、ルールがわからないと最適なフォーメーションが組めないように、アジャイルやリーン生産方式など既存のメソッドを理解することで各種 HCD(UXD)のツールを臨機応変に繋げることができます。結果として組織内の文脈を壊さずに HCD(UXD)のマインドセットや取り組みを推進できるのではないでしょうか。

メソッド化されていないと人に伝わらないことも事実です。いくら対象の手法が目新しく、優れていたとしてもメソッド化されていなければ形式知化されずに暗黙知でしか成り立たない場合が増えてきていしまいます。それでは、組織全体への普及は困難です。

HCD 活用力

組織全体への普及を目的とした場合には多くのステークホルダーが関係してきます。そのためには参加している、または関係しているすべてのステークホルダーを対象とした課題抽出や未来創造ワークショップの実施が必要不可欠になってきます。そのために求められるスキルとして、「ファシリテーション」が挙げられていました。

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((c) chrisbb@prodigy.net via Compfight cc)

ワークに限らず、プロジェクトでも積極的にファシリテーションを遂行すべきです。当ブログ記事「デザイナーとエンジニアのこれまでとこれから:D/E問題を考える」でも言及しましたが、特にデザイナーに至っては「デザインをする立場」から「デザインを導く立場へ」とマインドを切り替えてファシリテーションすべきだと考えています。

HCD(UXD)の本質は問題解決です。昨今よく耳にするデザインシンキングも元を正せば問題解決型のロジカルシンキングのエッセンスを取り入れています。つまり、HCD(UXD)には必ず目的があり、デザインすることそのものに意味を見出すのではなく、意味があってこその HCD(UXD)であることを理解する必要があります。ロジカルシンキングは、HCD(UXD)の手法やメソッドを論理的に活用し、前段となる理論を構築する際に必要となる、最低限の基礎スキルだと僕は考えます。

最後に

デザインをする立場からデザインを導く立場として、我々は時としてプロジェクトマネージャーとして立ち振る舞わなければなりません。プロジェクトチームの編成はもちろん、構想から設計、設計から実装、実装から評価、そして運用までの一連のプロセスに自身の身を置き、プロジェクトを完遂することではじめて、HCD(UXD)の重要性を実証できます。

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((c) The Rise of the Planet Apes)

結果としてリーダーシップが養われ、経営戦略的観点から HCD(UXD)を導入するために必要な計画や人材配置、費用対効果にまでコミットする機会が増えるようになり、ユーザー中心のサービス開発が企業内文化として根付いている状態が創り出せるのだと僕は思います。

関連エントリー:

Lean UX Tokyo ー 実践型 Lean UX ワークショップ

Lean UXの著者である Jeff Gothelf(ジェフ・ゴーセルフ)氏が日本に初来日し、1日 Lean UX ワークショップが開催されました。

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((c) Goodpatch Inc.)

Lean UX を主題としたワークショップと言えば今年の2月にも Lean UX の第一人者である Janice Fraser氏による Lean Startup マスターワークショップが同じくデジタルガレージにて開催されました。

比較的規模の大きい会社で UX のディレクターとして活躍された Jeff氏と、スタートアップ界隈で UX デザインを基軸とした多くのコンサルティング経験を積んでこられた Janice氏。有利/不利ではなく、それぞれの経験と工夫が深みとなり、ワークショップに現れています。

Lean UX の理論構築

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((c) Tokyo Graphic Recorder)

チームの共通理解を促すために前提を洗い出し、不確実性をなくすためにユーザーを
中心とした実験の設計は両者で共通していましたが、ジェフ氏の場合は人員が多い会社(環境)を想定していたのか、1チームを8名から10名で構成し、ディスカッションを円滑に進めるたに本書にも記載の仮説ステートメントや実験フレームワークなど、体系立てられたフォーマットに従って進めていきました。

  1. 仮想サービスの設定
  2. 推測による簡易ペルソナの作成
  3. アフィニティ・マップの作成
    (作成したペルソナがサービスによって得られる成果または効果の洗い出し)
  4. テーマごとにカードソートを実施
  5. 実現するための機能定義
  6. 継続利用を促すための指標の設定
  7. 仮説ステートメントの作成
  8. 実験方法の設計
  9. MVPの作成と発表

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((c) Goodpatch Inc.)

サービスの利用に際して継続性はあるか?ユーザーに好まれるか?収益は担保できるか?といったポイントを抑えながら、ビジネス観点から機能面における最適解を導き出すことが重要です。そして仮説ステートメントの作成には以下のようなフォーマットに従い定義していきます。

We believe [This feature(機能)] for [this persona(ペルソナ)] will achieve [these outcomes(得られる効果)] by measuring [metrics/KPI(主要な指標/KPI)]


定量/定性の両側面から散在される各種情報を上記のような方程式にまとめることで、サービス/プロダクト開発における時間の経過と共に忘れ去られていくことを防ぐと共に、ネクストアクションである実際の実験及びその後の効果測定に繋げやすくなります。

Lean UX は徹底した仮説思考故に Jeff氏が提唱するような理論構築を基盤とします。ダイナミックな印象を持たれている方もいらっしゃると思いますが、実はとても科学的であることがお分かりいただけるかと思います。

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((c) Goodpatch Inc.)

一方で Janice氏はスモール、かつバランスチームを維持しながらアイディエーションを始めとするユーザーやチームからの学びによって得られるチームビルディングを大切にしていました。

答えはユーザーのみが知っている。

ユーザーインタビューの進め方から学んだことをアイディアに反映する際のティップスを始めとする実践的な内容を、Janice氏自身の体験を基に様々な状況にも応用が可能な豊富なティップスをご紹介いただきました。

前述しましたがワークショップという形式上、アプローチが両者間で多少異なるも有利/不利はなく、サービスのステージやチームのメンバー構成など様々な状況を考慮し、それこそ実験的に進めていく必要があります。そのための引き出しとして Jeff氏や Janice氏の理論と実践から学べることが多くありました。

Lean UX Circle の発足

Lean UX 界を牽引するお二人が来日し、1日ワークショップを同時期に開催することは非常に貴重です。今回ご紹介したワークショップの内容や各企業で行われている取り組みを更に広め、組織内に留まらず、組織間の共創を目的とした実践的 Lean UX コミュニティ「Lean UX Circleを5月23日(金)に発足させます。決して一時的な事象として終わらせるのではなく、継続的に活動を続けることによって日本経済におけるものづくり文化の更なる発展を目標に取り組んでいきたいと思います。

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Lean UX を本気で組織や社会に浸透/普及させたいという想いに共感してくださる方がいらっしゃれば、ぜひ初回の説明会にご参加ください。

お待ちしています。

公式 Twitter アカウント:@LeanUXCircle
公式 Twitter ハッシュタグ:#LeanUXja

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