「Lean UXーリーン思考によるユーザエクスペリエンス・デザイン」刊行記念セミナーを開催します

2014年1月に刊行された「Lean UX」の邦訳版「Lean UXーリーン思考によるユーザエクスペリエンス・デザイン」。この本の出版を記念して、株式会社オライリー・ジャパン主催、グリー株式会社共催の公式イベント『「Lean UXーリーン思考によるユーザエクスペリエンス・デザイン」刊行記念セミナー』を3月6日に開催いたします。

Lean UX ―リーン思考によるユーザエクスペリエンス・デザイン (THE LEAN SERIES)

Lean UX ―リーン思考によるユーザエクスペリエンス・デザイン (THE LEAN SERIES)

  • 作者: ジェフ・ゴーセルフ,ジョシュ・セイデン,エリック・リース,坂田一倫(監訳),児島修
  • 出版社/メーカー: オライリージャパン
  • 発売日: 2014/01/22
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • この商品を含むブログ (1件) を見る
 

 「Lean UX が拓く最適なデザイン」と題して、Lean UX とは何か、どのように組織やチームに役立てられるのかといったイントロダクションの他に日本での Lean UX の実践者の方々をスピーカーに迎え、その取り組みについて紹介します。

後半のパネルディスカッションでは、エージェンシー・スタートアップ・事業会社などさまざまな立場と視点から組織に対する Lean UX アプローチの導入の可能性や課題について論じたいと思います。


開催概要
日時:2014年3月6日(木)19:30~(開場:19:00)
場所:グリー株式会社 本社14Fセミナールーム (六本木ヒルズ森タワー)
   東京都港区六本木6-10-1
参加費:無料
主催:株式会社オライリー・ジャパン
共催:グリー株式会社


スケジュール
19:00 受付開始
19:30 開始のご挨拶
19:40 セッション1「Lean Startupの実践と難しさについて」工藤博樹(MerryBiz/LSM Tokyo)
20:00 セッション2「Lean UX: 組織文化をデザインする」坂田一倫(コンセント)
20:30 休憩
20:40 セッション3「すばらしいUXは、どこから生まれる?」松井田彰(Ednity)
21:00 パネルディスカッション「Lean UX で変わる、変える」村越悟(グリー)× 工藤博樹 × 松井田彰 × 坂田一倫
21:30 閉会

申し込み
『Lean UX――リーン思考によるユーザエクスペリエンス・デザイン』刊行記念セミナー at GREE | Peatix


UX デザインを学ばれている方だけでなく、サービス開発やディレクション・プロジェクトのマネジメントをされている方、スタートアップの方、大企業で UX デザインを実践しようとされている方、いろいろな方にご参加いただける内容となっています。

ぜひ、ご参加ください!

 

もしユーザエクスペリエンスの設計担当者がドラッカーの『マネジメント』を読んだら

運営として関わっているインターネットメディア企業でユーザエクスペリエンス設計業務を担当する人が集うコミュニティ「Shibuya UX」で昨日、「Lean UXーリーン思考によるユーザエクスペリエンス・デザイン」の出版記念パーティ(非公式)を兼ねたトークセッションを開催しました。

原書「Lean UX」の出版経緯

f:id:separate-ks:20140211131416j:plain

著者である Jeff Gothelf氏と Josh Seiden氏とは2年前、アメリカはニューヨークにて開催された「Agile UX NYC 2012」で初めてお会いしました。当イベントはアジャイル開発とユーザエクスペリエンス・デザインの融合をテーマとしてセッションが数多く開催され、今では「Lean UX NYC」と改名し、今年も4月上旬に開催されます。

以前ブログでも当イベントの概要をご紹介しましたが、「Lean UX」の根底にある考え方が既に議論されていたことが伺えます。

f:id:separate-ks:20140211115247j:plain

  • スキルセットではなく、マインドセット
  • Requirement(要件)を Hypothesis(仮説)に置き換える
  • コラボレーション・センタード・デザイン

当イベントの主催者であった Jeff Gothelf氏は最後に切り出しました。

このイベントに参加している UX 関係者であればある程度の理解度は得られるけれども、まだまだ UX デザインのプロセスは他者からすればミステリーです。中で何が行われているのか、ブラックボックスのまま出てきたアウトプットを見てリアクションしなければいけない状態に陥ってしまっています。組織内で透明性が維持されていなければ、信頼は薄れていきます。コラボレーションはそんな危機的状況を打開してくれますが、それよりも大事なのな demystify、自身の行いを打ち明けることです。

ユーザエクスペリエンス・デザインは決して簡単ではない。だからこそ、打ち明けるべきです。そして、医者が医学用語の「感冒」を「風邪」とわかりやすい言葉に置換してくれているように、他社でも理解可能な共通言語で話せるようにならなければなりません。

f:id:separate-ks:20140211131517j:plain

この時点で Jeff Gothelf氏は「The Lean Series」のシリーズ・エディタである Eric Ries氏とも言葉を交わしており、「Lean UX」の出版に至ったそうです。

Lean UX ―リーン思考によるユーザエクスペリエンス・デザイン (THE LEAN SERIES)

Lean UX ―リーン思考によるユーザエクスペリエンス・デザイン (THE LEAN SERIES)

  • 作者: ジェフ・ゴーセルフ,ジョシュ・セイデン,エリック・リース,坂田一倫(監訳),児島修
  • 出版社/メーカー: オライリージャパン
  • 発売日: 2014/01/22
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • この商品を含むブログ (1件) を見る
 

「Lean UX」は何本ですか?

オンライン上の書評を拝見していて「どちらかと言うと、デザイン本としてではなく、プロジェクト・マネジメントに有効活用できそう」などをご意見をいただき、かつ書店に足を運べば置かれている本のカテゴリが様々であることがわかりました。ビジネスとIT、経営戦略、ウェブ・開発など手にとっていただける方々がバラエティに富んでいることが印象的ですが、僕は「Lean UX」は様々なカテゴリに応用可能な普遍的なマインドセットだと考えています。

  • チームから独立して働かない
  • 何をつくるか、ではなく何が効果的か
  • 正しく、ではなく正しいものを
  • すべてのものは仮説であり、実験する

何度も取り上げているこれらの「Lean UX」のマインドセットはアタリマエかもしれません。実際にそのようなご意見もいただいているのですが、むしろそのような意見を多く得られることはとても良いことです。アタリマエである、ということは既にこの本に書かれている内容を実践されていることの証明ですし、これから実践しようと検討されている方からしても、このアタリマエと現実のギャップを認識する上ではとても価値のある書籍だと思います。

「Lean UX」とドラッカーの「マネジメント」

f:id:separate-ks:20140211131602j:plain

人間中心設計を始めとする各種プロセスや手法は、素晴らしいアイディアに制限を欠けてしまう恐れがあります。例として、人間中心設計の導入を検討するものの、導入するからには規定されている流れに従って進むことを決意し、結果として導入目的はもちろん、そもそも達成したい目標が前述のとおりブラックボックス化する現象に陥ってしまいがちです。

「Lean UX」の考え方は、その事態からの脱却を支援してくれます。そして、その根底にあるコンセプトは50年以上も前に出版された、ドラッカーの「マネジメント」にて提唱されているマネジメント手法 MBO(Management by Objectives:目標による管理)の考え方を取り入れていることがわかりました。

マネジメント[エッセンシャル版] - 基本と原則

マネジメント[エッセンシャル版] - 基本と原則

 

『MBO とは、組織のマネジメント手法の1つで、個々の担当者に自らの業務目標を設定、申告させ、その進捗や実行を各人が自ら主体的に管理する手法。1950年代に米国のピーター・ドラッカーが提唱したとされる。本人の自主性に任せることで、主体性が発揮されて結果として大きな成果が得られるという人間観/組織観に基づくもの。』ー Wikipediaより

「Lean UX」のマインドセットをドラッカーの MBO にあてはめてみましょう。

  • チームから独立して働かない:分節化している企業の縦割り組織の在り方及び個々人の自主性や責任感を問いただします。
  • 何をつくるか、ではなく何が効果的か:チームで達成したい共通目標ないしは目的(オブジェクティブ)が何かを問いただします。
  • 正しく、ではなく正しいものを:共通目標ないしは目的に対してメンバーの仕事への取り組み方法(マネジメント)を問いただします。
  • すべてのものは仮説であり、実験する:すべての行為における動機付け、及び達成感とは何かを問いただします。

「Lean UX」で大事にしている関係者全員の前提の洗い出しから対象のプロダクトやサービスの提供価値や目的を明示化することで、共通化を図り、何をつくるかという話題から何のためにつくるかへの移行、そして実際に候補となり得るユーザーと会話を交わすことでチームメンバーの行為における動機付けや達成感を与えることが可能になります。

結果として無駄が省かれ、組織で考える仕事の効率化をマネジメント観点から実現してくれます。

「もしドラ」で野球部の女子マネージャーが監督や部員の前で発した、「野球部を甲子園に連れて行く」という強い意志表示によって監督はもちろん、部員全員が共通目標に向かってそれぞれが主体的に動き、チームに一体感が生まれるようになりました。

もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら

もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら

 

まとめ:「Lean UX」は「マネジメント」である

つまり、ユーザエクスペリエンス設計担当者がドラッカーの「マネジメント」を読んだら、「Lean UX」に書かれている内容が自然と実践できていることになります。

言葉を変えれば、「Lean UX」に書かれている内容を実践するためには、ドラッカーの「マネジメント」を読むことが近道なのかもしれません。

改めて、「Lean UX」とは何本ですか?という問いに対して。

「Lean UX」は、日本企業が抱えている潜在的な課題を表面化し、本来のモノづくり・コトづくりのあるべき姿に気づかせてくれる本です。

週末に日本全国で開催されている各種ハッカソンイベントに見られるような、短時間でコラボレーションしながらプロダクトやサービスをつくりあげていく協業の重要性は、そろそろ認められるべきなのではないでしょうか。

f:id:separate-ks:20140211131713j:plain

もしユーザエクスペリエンス設計担当者がドラッカーの「マネジメント」を読んだら。もうひとつの「もしドラ」ストーリーとして、ぜひ実践してみてください。

関連エントリー

世界防災・減災ハッカソン「Race for Resilience」

記録的な大雪を観測した先週末は石巻にいました。発展途上国✕防災・減災をテーマにした、世界各国同時開催のハッカソン「Race for Resilienceに参加するためです。

f:id:separate-ks:20140210172844j:plain

(Race for Resilience 石巻会場の参加者です。) 


Race for Resilience 石巻会場 - YouTube

「Race for Resilience」は、世界銀行東京防災ハブが今年開設されたことを記念して開催される、世界防災・減災アイディアソン、ハッカソンです。ICT(Information and Communication Technology)を防災や減災に活用し、イノベーションを推進することを目的としています。初年度となる今回は、日本を含むアジアやロンドンなどの世界各地で同時開催され、日本では東京、石巻、名古屋の3会場で行われます。

発展途上国✕防災・減災をいうテーマのもと、今年1月に行われたアイディアソンに続き、エンジニアやはてん途上国で支援を行う専門家、学生などが集い、発展途上国の防災や減災に役立つソフトウェアやハードウェアを2日間でつくりあげていくハッカソン。僕はメンター審査員として、3年前に被災した石巻の会場に参加しました。

f:id:separate-ks:20140209092909j:plain

(石巻市内の様子。鉄道はもちろん、バスも運休のため会場までの移動が困難でした。)

初めての石巻でした。記憶にまだ新しい2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震。ぼくはネットを通じて「助け合いジャパン」の活動に参加していました。それでも被災地と物理的距離が離れていることへの無力さを痛感しました。今回は、実際に被災地に足を運び、被災された方々の言葉に耳を傾け、防災・減災に向けた素晴らしいアイディアの実現を支援すべく、石巻に参加することにしました。

石巻商業高校にて2日間に渡り開催された今回のハッカソン。参加者は40名強ほど。石巻在住の学生もいれば、僕のように東京から足を運ぶ企業の専門家の方々、国内在住の外国人の方々が参加されていました。

f:id:separate-ks:20140208133904j:plain

(石巻会場は石巻商業高校の体育館でした。計7つのチームで競い合います。)

f:id:separate-ks:20140208172908j:plain

(リーダーを務める石巻の男子学生とチームメンバー。学生はもちろん、外国の方も参加されています。)

ダイバーシティとグローバルな空気な東京にも負けていません。最年少は地元の小学校に通う小学六年生。ほかの参加者に負けずとも劣らないアイディアを初日にピッチしていました。興味を持ったアイディアのところに集まり、チームを構成するチームビルディングでも人気を誇っていました。

「Race for Resilience」のハッカソンは公式ルールに従い、以下のような流れで進行されていきました。

  1. アイディアのピッチ
  2. チームビルディング
  3. ブレインストーミング
  4. 解決したい問題定義の登録
  5. 解決策の詳細の登録
  6. 開発
  7. 各チームの中間発表
  8. 開発
  9. 各チームの最終発表
  10. 審査

先日開催した「リーン思考のユーザエクスペリエンス・デザイン・ワークショップ」でもご紹介した「CPS(Customer - Problem - Solution)仮説検証モデル」のアプローチとも非常に親和性が高いです。

f:id:separate-ks:20140208170958j:plain

(絵コンテを基に必要な画面を設計している地元の女子学生。あっぱれ。)

僕自身には被災経験はありませんし、実際の現場の様子はわかるはずがありません。それでも審査員としてご招待いただいたからには少しでもお役に立とうと、審査基準の1つでもあった問題解決のユーザーニーズ適合性を、アイディアを具現化させていく過程において未熟ながらサポートさせていただきました。

f:id:separate-ks:20140209143457j:plain

(中間発表/最終発表の様子。東京ー石巻ー名古屋と3つの会場をオンラインで繋ぎます。)

7チームの内、約半分のアイディアは地元の方からの提案でした。

  • Anti-Disaster Manga
    災害に関する知識を世界の子供達に拡げるためのメディアとして子供達が自ら取材し、つくり上げる新聞「石巻子供日々新聞」をアプリとして提供するアイディア。もはや世界に共通する日本特有の MANGA 文化を通じて世界と繋がることができる。

  • つなプラ
    AR避難訓練シミュレーター「つなプラ(津波+スナップ)」。行政や自治体から災害時のデータを収集し、津波の高さを AR 技術を用いて視覚化。避難訓練の予備知識をシミュレーター形式で提供し、防災の備えがより現実的に近いものになるアイディア。

  • Disaster Survival Toolbox
    災害時に生き残るための知恵を SNS を使って集めるアイディア。通常時と災害時でアプリのインターフェイスや機能を変更することが可能。テキストに依存した情報でもサービスにアップロードすれば他のユーザーがブラッシュアップしてくれる仕組みの提供。

これらのアイディアは、実際の経験に基いて提案されたものです。彼らとの対話のなかで感じたのは、減災を願う強い意思。この想いをどのようにサービスとして表現し、発展途上国含む世界各国の人々に伝えていけばいいのか、が重要だと思いました。

f:id:separate-ks:20140209140753j:plain

(石巻会場の審査員席。他にも Google の及川さん、SAFECAST の Peter さんがいらっっしゃいました。)

誰かの役に立ちたい。

社会で働いているからには僅かながらでも、この想いは誰にでもあると思います。僕も同じです。そして今回のハッカソンにて開催される3つの会場(東京✕石巻✕名古屋)の内、石巻を希望させていただいたのも、この理由からです。

f:id:separate-ks:20140209163226j:plain

(石巻会場の優勝は「つなプラ」チームでした。おめでとうございます!)

優勝チーム「つなプラ」はグローバル審査へと進み、7月にイギリスはロンドンにて開催されるグローバルアワード表彰式に向けたプレゼンテーションを世界各国の優勝チームと共に行います。通過すれば、2015年3年に国連防災世界会議にて成果発表会が行われます。僕は、引き続き彼らを支援していきたいと思っています。


尚、中間報告の動画がオンラインで配信されていますので、ぜひご覧ください。


Race for Resilience ハッカソン 2/8~9 中間プレゼン 東京&石巻 - YouTube

参加された地元石巻の方々はもちろん、同じ想いで石巻に参加された都内の専門家の方々や他の審査員の方々、そして当イベントの運営スタッフ「イトナブ*1」の方々には大変お世話になったと共に、多くを学ぶことができました。

f:id:separate-ks:20140209200127j:plain

(石巻会場のメンター審査員の方々と。非常に勉強になりました。)

本当に、ありがとうございました。

関連リンク:

*1:イトナブとは「IT」×「イノベーション」×「営む」×「学ぶ」の造語です。 石巻の次世代を担う若者を対象にソフトウェア開発やウェブデザインを学ぶ拠点と機会を提供し、地域産業×ITという観点から雇用促進、職業訓練ができる環境づくりを目指しております。

This work is licensed under a Creative Commons Attribution 4.0 International License.
Others, like quotes and images belong to its original authors.