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第3回HCD-Netサロン「パターンランゲージとHCD」

人間中心設計機構(HCD-Net)が主催する第3回HCD-Netサロン「パターンランゲージとHCD」に参加してきました。ゲストに建築家である中埜博さんを迎え、「パターンランゲージ」の歴史を振り返りながら、デザインないしは人間中心設計の今後の方向性について考えるきっかけを与えてくださいました。(中埜博さんが発表された資料の一部『「クオリティ」を生成するプロセスの追求 : A Search for a Process getting "Quality"』

中埜さんは「機能主義」というキーワードをヒントに挙げました。この考え方はリース・サリバンの「形態は機能に従う」というフレーズで有名なのですが、デザインの中心には機能があり、その機能からフォルムや形態をデザインする手法です。

やがては政治学者のエルンスト・ハースらが機能主義を拡張させて「新機能主義」を提唱。モノとヒトが1対1の世界だった機能主義を土台に、専門家が出現し分業化が推し進められました。結果として専門家分業の時代が1950年頃に訪れ、設計図が出現。専門家が間を担うようになり、素人の直接の知恵が反映され、理想化されたユーザの参加が活気づくようになりました。

今回のセミナーの議題であるパターンランゲージが誕生したのは1970年頃で、建築家・クリストファー・アレグザンダーが新機能主義に基づいて提唱した新たな建築方式です。

特徴は、設計図をパターンランゲージという言語体系を用いて形態を生成していくことにあります。セマンティック・ツリーなどを活用された事例をご紹介いただきましたが、各ノード(要素)から共通のルールを見出し、相関性を抽出することでパターン化する新機能主義の考え方は興味深いです。

これは、人間中心設計プロセスにおけるペルソナのファクトイドの抽出からグルーピングまでの作業と非常に似ていて、設計図に落とし込むまでのプロセスが体系化されていました。複数のパターンがまとまって1つの物語(シーン)として図式化(見える化)される部分的問題解決手法も情報アーキテクチャに通じるモノがあります。

《発見メディア》としてのパターン・ランゲージ

ただ、パターンランゲージは常に変化し続け、プロセスの中で必要に応じて変更を加えながら建設が進められます。中埜さん曰く、この営みは数十年単位で成長させていくとのこと(正にアジャイル方式です)。動的であることで、私たちは始めて全体性を認識することができ、全体性の中の「名付けられぬ質(QWAN : Quality Without A Name)」を定義することができます。

Web 上の情報構造を建築に見立てていることから、情報アーキテクチャと建築は元々深い関係にあるのですが、パターンランゲージの考え方には要件の抽出やシナリオベースドアプローチ等、横断的に問題を解決する人間中心設計プロセスと共通部分が多くあることがわかりました。建築分野にはもっとヒントが転がっている気がします。

「人間中心と言うからには、私は本当に人の幸せを考えられているのか、常に考えるようにしている。」 - 中埜博

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