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人間中心設計の基礎

人間中心設計機構が HCD-Net ライブラリーシリーズの第1弾として出版した「人間中心設計の基礎」を読了しました。恐らく、日本初となる人間中心設計(HCD)の専門書です。大学、大学院の教材としての利用も想定されているため読むのに骨が折れそうになりましたが、HCD のこれまでからこれからをアカデミックにまとめた良書です。

人間中心設計の基礎 (HCDライブラリー (第1巻)) 人間中心設計の基礎 (HCDライブラリー (第1巻))
黒須 正明

近代科学社 2013-06-03
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『本書は、こうした人間中心設計に関する現時点での最新情報をまとめたもので、概論書ないしはテキストという位置づけのものである。読み風にはまとまっていないため、多少読むのに骨が折れるかもしれないが、是非、通読し、人間中心設計の何たるかを理解し、その考え方や方法論を身につけていただきたい。』-「はじめに」より

感想ではありませんが、読み終えた後の回想録をまとめてみました。

HCD は今では多くの業界で取り入れられるのうになりました。ISO の発効から2010年の統合は始まりに過ぎず、ハードウェア/ソフトウェア問わずデザインを表面的な位置づけからサービスまたはプロダクト開発における顧客ニーズの探求を支援する方法として位置づけられるようになりました。以降、IDEO に代表されるデザイン思考を提唱する「イノベーティブな」会社が次々と誕生することによって、世界を3つのレンズを通して考えてみることを教わりました。

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(参照元:http://www.ideo.com/about/

  1. Desirability(有用性)-ユーザの要求
  2. Feasiblity(実現可能性)-企業体質や能力
  3. Viability(実行可能性)-企業の健全性

それぞれがビジネス(または事業)、技術(または開発)、人(またはユーザ)の観点から HCD のプロセスである

  • 利用状況の理解と明示
  • ユーザ要求の明示
  • ユーザ要求を満たす解決策の作成
  • 要求に対する設計の評価

を満たす状況をつくりだすことに貢献しています。更に、昨今のアジャイル開発リーン・スタートアップもこの三者を軸としたマネジメント体系を推奨しています。結果として文脈は違えど、HCD の土台形成に役立てられていることは確かです。よって本書にて紹介されている人間中心設計の背景から基礎を改めて理解し、ファシリテーターとしてエッセンスをチームに注入することが今後求められていると思います。それも、デザイナーに限らずそれぞれの立場から取り組むことによって著者の黒須先生がおっしゃるとおり本来の人間中心設計の在るべき姿に近づいていくのだと思いました。

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(参照元:http://www.hcdnet.org/hcd/column/hcd_06.php

『人間中心設計は、文字通り設計プロセスに焦点を当てている。しかし、それだけではなく、製品のライフサイクル全体のことを考えるのが本来の人間中心設計である。』-「はじめに」より

この人間中心設計のプロフェッショナルの育成を兼ねた専門家の認定制度「人間中心設計専門家」が人間中心設計機構によって定められています。本年度の応募要項は年末まで開示されませんが、ご興味があればぜひ。

最後に、上記の ISO にて定義されている人間中心設計のプロセスは背景にある目的や意味をつい見失いがちになってしまいます。手段の目的化、です。組織の体質によって異なるとは思いますが、ぼく自身が人間中心設計の内部浸透を目的とした活動を進めていく際に、マインドセット、つまりは人間中心設計の考え方を先ずは根付かせていく必要があると考え、仮ではありますが複数のメンバーと一緒にそれぞれのプロセスに意味を持たせて別の言語でステップを描いてみました。 

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  1. Understand & Identify(理解と特定)-ビジネスニーズを理解し、顧客ニーズから課題を特定する
  2. Observe & Analyze(観察と分析)-顧客の行動を理解する
  3. Focal Point(焦点)-解決したいポイントを探り、特定の顧客にターゲットを絞る
  4. Storify(文脈化)-顧客のジャーニー(利用シーン)を描く
  5. Prototype(試作)-コンセプトを視覚化する
  6. Test(評価)-顧客からフィードバックを得てからよりよい製品に必要な改善策を探る

まだ完成形ではないですが、目的意識を持つためにデザイン思考のエッセンスでもある問題解決により焦点を当てた絵図になっています。人間中心設計の価値の1つは問題解決であると思うので、ぼく自身も忘れないように気をつけたいところです。

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