セールスフォース・ドットコムが主催するイベント"Cloudforce 2011 Japan"に行ってきました。テーマは"Welcome to the Social Enterprise*1"。クラウド・コンピューティングに加え、Facebook や Twitter などのソーシャル・メディアを企業で活用する方法を強く打ち出す内容となっており、セールスフォースにとって日本は世界で2番目に大きいマーケットという前評判を聞いていただけに、1万人以上の参加者が訪れる大規模なイベントでした。
最も注目を浴びたのは米セールスフォース CEO の Marc Benioff氏の基調講演でした。セールスフォースはその社名から想像できるように、クラウドからスタートした会社でしたが、近年のソーシャル革命によって訪れる「ソーシャル・シフト」の重要性を謳っていました。
コンピューティング・モデルは1960年代ごろから10年スパンで著しい進化を遂げており、1990年頃から Web(デスクトップ)アプリケーションからモバイルへ。そして2010年にはソーシャル革命によってクラウド・コンピューティングは更なる進化を遂げていることがわかります。Benioff氏曰く、この著しい進化の過程は Steve Jobs氏がテクノロジー革命を、Facebook の Mark Zuckerburg氏がソーシャル革命を牽引してきた結果だと語ります。
"Social revolution has created a social divide. Is your product or service social?"
「ソーシャル革命は、ソーシャル・デバイドを生み出している。個人はすでにソーシャル化しているが、あなたの企業や製品はソーシャル化しているだろうか?企業は、そのギャップをまずは埋めなくてはならない。」
Benioff氏は最後にソーシャル革命によって生み出されたソーシャル・デバイドを解消する手段として3つの策を打ち出しています。それが、セールスフォースが提唱する"Social Enterprise Platform(ソーシャル・エンタープライズ・プラットフォーム)"です。
- Social Customer Profile - データベースの進化とともに、顧客のソーシャルプロファイルを構築する
- Employee Social Network - 社員のソーシャルネットワークをつくり、顧客同様にエンパワーする
- Embrace Customers by Products & Services - 顧客のソーシャルネットワーク化、製品のソーシャルネットワーク化
セールスフォースが実現する Social Enterprise Platform は以下の要素で構成されています。また、それぞれのフェーズでセールスフォースが提供しているソリューションの紹介もありました。詳しくは掘り下げませんが、かなり充実している印象を受けます。
- Social Customer Profile - ソーシャルネットワークと統合された顧客データから顧客のソーシャルプロファイルの作成・管理。
- Collaborate - 中核をなす社内コラボレーション用アプリケーション。
- Connect & Sell - 営業支援アプリケーションで顧客とのインターフェイスや販売情報などをリアルタイムに提供。
- Service & Engage - 電話やメール、ソーシャルメディアなどのマルチチャネルを統合し、サービスや会話への参加を管理。
- Social Marketing - ソーシャル・ネットワーク上の情報を分析するアプリケーション。
- Automate & Extend - パートナー企業より提供されている業務アプリが稼動するクラウド・プラットフォーム。
- Social Apps - 複数言語に対応したプラットフォームによるソーシャル・アプリケーションの提供。
- Products & Partners - 製品とパートナーをより近くするオープンなクラウド環境。
Social Enterprise を実践している数々の事例が紹介されていましたが、ブランディングにも有効であることが伺えます。Benioff氏が今春に発表した「つぶやく車」で話題となっている"Toyota Friends(トヨタ)"も Social Enterprise で成功している企業の1つです。また、Social Enterprise Platform は顧客とのリレーションを築いていく一連のストーリーに従って構成されていることから、顧客ありきで考える人間中心設計に似たアプローチを取っていることがわかります。"Retail Experience"の設計で成功している Burberry の事例もピックアップされていました。
最後に、Benioff氏は Social Enterprise を実践する前の心得である"SOCIAL"について触れています。新たなビジネスの仕方があるということと、Social Enterprise への扉は既に開いていることを示したかった、と話します。
Social Enterprise は企業にとってどんな意味があるのか?
結局はここだと思っています。来場者も Social Enterprise を導入することによって企業にどのようなインパクトをもたらすのか、といった疑問を常に投げかけていました。これまでの話から、ぼくが考える企業にとって Social Enterprise Platform を導入する「意味」です:
- Mobility(起動力)- ビジネスの爆発的な成長に対応できる
- Continuous Innovation(継続的なイノベーション)- ビジネス要件がめまぐるしく変わる中で新しい手法でアプリケーションを開発し、変化に遅れないようにスピーディに、かつタイムリーに対応できる
- Understanding Customer(顧客の理解)- Social Enterprise によってこれまで以上にリアルに「顧客を知る」ことが可能になる
- Integration(統合)- 組織や役割の縦割り化をストップし、すべてを結合することで効率的にマネジメントできる
午後に参加したセッションでも ASKUL の秋岡 洋平氏とネットイヤーグループの石黒 不二代氏は自社に Salesforce を導入したことによって得られたベネフィットを具体例を交えながら解説されていました。特にネットイヤーグループでは"Understanding Customer"に注力し、ソーシャルメディアを活用したカスタマー・サポート・サービス「Social Voice for Support」を年明け2月に発表するとアナウンスがありました。
最後に、米セールスフォースの Vice President を務める Pat McQueen氏は大幅なコスト削減を実現するクラウドプラットフォームの活用事例の紹介がありました。Facebook です。急成長を続ける Facebook にも Salesforce は選ばれており、70%ものアプリケーションがクラウド上に格納されているようです。Facebook も前述した Toyota や Burberry 同様に Social Enterprise Platform を実現するためのビジョン"facebook future"を掲げています。ソーシャル・ネットワーク・サービスだからこそ、顧客とのリレーション強化が試されているのではないでしょうか。
関連エントリー:
*1:ソーシャルネットワーク機能を活用して企業(ビジネス)と顧客を近づける Salesforce が提供する CRM ツール。