プロダクトデザイナーの深澤 直人さんが手がけたプロダクトと写真家である藤井 保さんが撮影した写真の展覧会という意外性に富んだ企画が 21_21 Design Sight で開催されています。
モノの周りには空気や光が存在していて、カタチを生み出すのではなく、光や空気を含めたアイデンティティを見出すからこそ、モノやデザインにカタチを与えることができるという深澤さんの観点は斬新でした。モノを取り囲んでいるのは空気や光だから、そのモノをカタチにした空気中の穴の輪郭は、確かにモノの輪郭と同じなはず。
藤井さんの写真を眺めていると、モノの周りにある光が気体から固体に変化し、美しい輪郭を描いていました。それもそのはず、藤井さんは撮影される際に光量と色温度を調整することで、自然の光を再現するように徹底されているようです。
「藤井さんの写真を最初に見たとき、そのはっきりとしないモノの輪郭に驚いた。しかし、考えてみればモノは空気や光に溶けているから、人には輪郭がはっきりと見えていないことに気付いた。その事実を知って感動した。藤井さんはたとえモノを撮っていても風景を撮っているんだと思った。わたしのデザインと一緒にその周りの空気を撮っている。藤井さんには、みんなが知っているけど見えていない輪郭が見えている。 」
via. 21_21 DESIGN SIGHT-「THE OUTLINE 見えていない輪郭」展
世界の第一線で活躍されている深澤さんの作品は、空気に馴染み易いフォルムをしていて、意識せずとも私たちの生活に深く根ざしているものが非常に多いことを再認識しました。人間の無意識をデザインに置き換える、その空気感を捉えたデザインと、それが形成される輪郭を実感できる展示でした。
モノにカタチを与えようとすること自体はとても主観的な行為ではありますが、モノを主体的に捉えるか、あるいはその周りを主体として捉えるかによって、デザインの概念もまた変わってくるかもしれません。