ユーザーの行動・体験から要求を探る「コンテクスチュアル・インクワイアリー」

※本記事は Web担に寄稿した記事『ユーザーを本当に理解していますか? ユーザーの行動・体験から要求を探る「コンテクスチュアル・インクワイアリー」』からの部分転載です。

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((c) iStockphoto LP. All Rights Reserved.)

突然ですが、サービスをご担当されている方々に質問です。

  • 最近、自社サービスのユーザーと接したのはいつですか?
  • そのユーザーの本当の姿を正しく理解されていますか?

今回は、ユーザーの行動や体験から、アクセス解析やアンケート調査などではわからいユーザーが本当にもとめていることを探ることで、サイトリニューアルや仕事の改善効果の最大化を図るユーザー調査手法のひとつ「コンテクスチュアル・インクワイアリー」を解説します。記事の後半では、コンセントの2つの事例も紹介します。

コンテクスチュアル・インクワイアリーを行うメリット

「コンテクスチュアル・インクワイアリー」とは、特別な何かをするわけではなく、わからないことがあれば、手間を惜しまずユーザーに聞くというシンプルなアプローチです。画期的な何かが見つかるということを保証するものではありませんが、ユーザーに対するより深い理解と、プロジェクトを進めるにあたっての根拠となる情報を与えてくれます。

ユーザーに直接話を聞けばよいとはわかっていても、プロジェクトを進めるにあたり予算やスケジュールが限られているなか、何を聞けば良いのか、どうまとめればよいのかがわからず、聞くまでにいたっていないといった状況は少なくありません。また、さまざまな手法でユーザーの情報を集めていたものの、ユーザーが求めているものに近づけていないという問題を抱えている方もいるでしょう。

そうした状況下で、ユーザーへのヒアリングを効果的に行い有効な情報を得るための手続きとして、「コンテクスチュアル・インクワイアリー」と、インタビュー結果をまとめる「コンテクスチュアル・デザイン」をご紹介します。この記事を読んでみなさんもぜひ一度試してみてください。

ユーザーを理解する調査手法を4つのタイプに分けて理解しよう

コンテクスチュアル・インクワイアリーを説明する前にまず、ユーザー調査の分類について説明します。ユーザー調査は「量的調査」「質的調査」に分けられます。さらに、「発見を目的とした調査」「仮説の検証を目的とした調査」に分けられます。

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((c) IA 100: ユーザーエクスペリエンスデザインのための情報アーキテクチャ)

今回ご紹介するコンテクスチュアル・インクワイアリーは、ユーザーの思考や行動の本質的な発見を目的とした質的調査の代表的なユーザー・インタビュー手法のひとつです。

コンテクスチュアル・インクワイアリーは、あらかじめ質問項目が設定された一問一答形式のユーザー・インタビューではなく、ユーザーとの自然な会話により主体的な語りを促し、対象と課題に対する視点や行動を記述・モデル化する、文化人類学から生まれたアプローチです。

コンテクスチュアル・インクワイアリーの他にも、発見を目的とした質的調査には、ユーザーに記録を付けてもらう「日記調査」や、複数人を対象とした「グループインタビュー調査」などがあります。

どの調査も本質的なユーザー理解のために効果的ではありますが、ユーザーの行為や意図を直接的に理解しにくく、かつユーザー自身の理解や意見が周囲の環境によって影響を受けてしまうことから、得られる結果が調査の企画意図に沿わない恐れがあります。そのため調査結果を分析する際にこれらの関係因子を考慮する必要があり、調査する側のすべての関係者の理解が重要になってきます。

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では、どのようにコンテクスチュアル・インクワイアリーを進めていけば良いのでしょうか?どのようにプロジェクトに組み込めば良いのでしょうか?

続きはぜひ Web担に寄稿させていただいた記事『ユーザーを本当に理解していますか? ユーザーの行動・体験から要求を探る「コンテクスチュアル・インクワイアリー」でご覧ください。


最後に、ビッグデータ時代の到来とも呼ばれている昨今、自社サービスを利用しているユーザーの多くの情報をツール1つで取得できるようになりました。そのため、数字を介してユーザーの行動を探る機会も増えてきました。でも、ユーザーを「知ったつもり」になってはいないでしょうか?

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((c) iStockphoto LP. All Rights Reserved.)

ユーザーを「知る」ことは「理解する」ことと同じではありません。「理解する」ということは、ユーザーの行動ひとつひとつの背景にある意図や思考、文脈までを把握するということです。しかし、今や技術に頼る一方で情報閉鎖を自分自身に課してしまい、データは十分でもどう解析したら良いかわからないという事態に陥ってしまいがちです。たとえ量的分析からユーザー理解を強化し続けたとしても、数字で証明される結果の「なぜ」がわからないままになってしまい、改善の段階で行き詰まってしまいます。

結果として引き算をすれば良いのか、足し算をすれば良いのか、明確な方針が定まらないまま小手先の改善のみで終わってしまいます。このような状況を打破するためには、量的分析では理解しきれないユーザーの行動や思考の連続性や文脈性を考慮する必要があります。

そのために、解説してきたコンテクスチュアル・インクワイアリーの手法を活用して、ユーザーの本当の姿を正しく理解するようにぜひ試みてみてください。

関連エントリー:

B2BやB2Cはもう要らないーHuman to Human(H2H)へ

PureMatter というシリコンバレーに本社を置くソーシャルメディア・マーケティング・エージェンシーの CEO を務める Bryan Kramer氏が某イベントで担当したセッションが非常に興味深かったので翻訳しました。

原文:

There is no more B2B or B2C: It’s Human to Human, H2H | Bryan Kramer's Blog



従来、企業のマーケティング活動(ないしは取引形態)は2つのカテゴリに分類されると言われていました。1つは Business-to-Business (B2B)、もう1つは Business-To-Consumer (B2C) です。想像するに、この分類は企業の専門性や対象としている顧客によって異なり、企業ブランドのマーケティング・メッセージを効率良くターゲティングして発信していくための手段に過ぎないと思っています。

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((c)Al_HikesAZ via Compfight cc)

しかし、この分類は結果として「シナジー」や「流通」といった自社の製品とバイヤーやパートナーとの関係性を訴えるための不自然な言葉を残してきました。顧客は皆、混乱しています。なぜ我々は自社が販売している製品や提供しているサービスをもっとシンプルに表現することができないのでしょうか?更に、我々が行っているマーケティング活動はなぜ、カスタマー・エクスペリエンスが考慮されていないのでしょうか?

事実、B2B や B2C といった従来の取引形態ではもはや自社のマーケティング活動を表現することが難しくなくなってきました。B2B2C や B2C2C を例に、B2B や B2C を区別することにも意味がないのではないでしょうか。我々はもっと、利口に見られたいがために凝った表現に左右されず、自社の顧客の立場、それこそ消費者の立場に立って自社のマーケティング活動を見直すべきだと思います。

昨今のマーケティング業界では消費者との One-to-One(ワン・トゥー・ワン)な関係性を構築するためにビックデータという宝の山から個々人の情報を効率的に集約し、個々人のエクスペリエンスに最適化させた施策を提供するパーソナライゼーションが流行し始めました。一方で、ソーシャル・メディア・マーケティングが普及し、自社に人格を与え One-to-Many(ワン・トゥー・メニー)な関係性を構築する動きが活発になってきました。

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((c) Social BIz Solutions via Compfight cc)

対極にあるマーケティングとソーシャルの関係性は一転し、バランスが崩れてしまいました。個々のパーソナライゼーション強化のためにソーシャルはマーケティングと密に関わっていくべきです。ソーシャル・メディアの爆発的な普及によって、人間は想像以上に複雑な行動を起こす生き物であることが証明されました。これは、ソーシャル・メディアが我々に与えてくれた大きな気づきでもありますし、転機でもあります。

私はこう考えます。ビジネスには感情はありません。人間には、あります。人間には感性があります。人間は、互いを理解しようとします。但し、我々は人間として、日頃から失敗を身近に感じて生きる生き物です。間違ったことを発言し、恥をかくことも人間的活動の1つです。ソーシャル・メディアは、個人として、または集団として無名であることの暗黙的理解をデジタル・プラットフォームとして提供しました。本来の人間的な営みとかけ離れているこの事態からの脱却を目指し、人間本来の側面である共感や理解、容赦を通じて本来の集団としての営みとコミュニケーションを取り戻すべきではないでしょうか?

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((c) SalFalko via Compfight cc)

コミュニケーションは複雑であってはなりません。正直で、かつ簡潔で、人間味溢れなければなりません。これが、Human-to-Human(人間対人間; #H2H)という考え方なのです。

人間はとても複雑な生き物です。にも関わらず、シンプリシティを求めます。人間としての我々の挑戦は、複雑な情報を認知し、理解し、より簡単な方法で伝えていかなければなりません。これは、マーケティング担当のアナタに向けられた話ですよ。人間の間に共通項を見つけ、誰もが理解できる言語で話せるようにしてください。それが、我々が望んでいた世界なのですから。

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サービスデザイン―無形をデザインする

サービスデザインを最近勉強しています。

サービスデザインは「インタンジブル(無形)のデザイン」とも置き換えることができます。特徴は、サービスとユーザ間のタッチポイントを形成するステークホルダーや利用文脈をデザインすることに焦点をあてていることです。

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つまり、エンド・ユーザ観点で語らてきたエクスペリエンス・デザインの文脈にエンタープライズ(企業や事業が提供するサービス)の観点が加わりました。今年春に日本で初めてのサービスデザインをテーマとするカンファレンス Serivce Design Japan Conference 2013 が開催され、当イベントの基調講演にて Service Design Network の発起人である Birgit Mager 氏は言いました。

Service Design aims to ensure service interfaces are useful, usable and desirable from the client’s point of view and effective, efficient and distinctive from the supplier’s point of views. ー Birgit Mager

(サービスデザインはクライアントの観点からすべてのサービス上のインターフェイスが使いやすく、価値があり、かつ好ましいものであること、そしてサービス・プロバイダーの観点から効果的かつ効率的で特有なサービスづくりを目的としています。)

ユーザエクスペリエンスの最終到達地点はサービスデザインなのかもしれません。優れたユーザエクスペリエンスまたはサービスの実現にはサービス・プロバイダー(提供者)である組織そのものを対象としたデザイン(問題解決)的アプローチが不可欠です。

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(参照元:Service Disciplines: Who does What, When, Where and How?ーサービス提供にはマネジメントやエンジニアリング観点の配慮が求められる。)

情報アーキテクチャ界隈でも同様のシフトが起こっています。「Pervasive Information Architecture」でも言及されているとおり、企業全体を範囲としたオペレーションとシステムの最適化を図る「エンタープライズ・アーキテクチャ」の重要性が増してきています。単なるモデル化だけではなく、システム・アーキテクチャを様々な観点からあるべき姿に近づけるための仕組みやプロセスにフォーカスをあてています。エンタープライズ・アーキテクチャをユーザエクスペリエンス・デザインの一部として捉えると、企業全体のサービス戦略とアーキテクチャとの整合性担保に欠かせないことがお分かりいただけると思います。サービスデザインも同様です。

企業の未来を切り開くための活動を総合的に支援している各種コンサルティング会社の最新動向がそれを物語っています。米アクセンチュアはデジタルマーケティングビジネス強化のためにロンドンに本社があるサービスデザイン・コンサルティング会社 Fjord を買収し、米マッキンゼー・アンド・カンパニーは当ブログでもご紹介したとおり、サービスデザインに似た活動を開始しています。

デザインの強みは、ひとつの定義におさまっていないことだと思います。MIT が「What is Design?」と題されたセッションを開催する程ですから。今年に入り、サービスデザイン関連の書籍が2冊発売されましたが、それぞれがサービスデザインをどのように解説しているのか、ご紹介していきたいと思います。

This is Service Design Thinking: Basics, Tools, Cases

This is Service Design Thinking※翻訳版)」ではサービスデザインを以下のように定義しています。

Understanding the value and the nature of relations between people and other people, between people and things, between people and organizations, and between organizations of different kinds, are now understood to be central to designing services.

(サービスデザインとは、ヒトとヒト/ヒトとモノ/ヒトと組織/組織と組織間のつながりをサービスデザインの中核的価値として理解することです。) 

This is Service Design Thinking: Basics, Tools, Cases This is Service Design Thinking: Basics, Tools, Cases
Marc Stickdorn Jakob Schneider

Wiley 2012-01-11
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専用サイトにてテンプレートが無償で公開されている「The Customer Journey Canvas(カスタマー・ジャーニー・キャンバス)」では、人と物とのつながりを理解することができます。サービスのステージを大きく3つに分類し、ユーザの expectation(期待)と実際の experience(体験)を対比するができると共に、結果としてユーザの satisfaction(満足度)を可視化できるように工夫されています。


This is Service Design Thinking - Book Trailer ...

但し、カスタマー・ジャーニー・マップを描くことそのものがサービスデザインではありません。確かに、サービスの全体像やユーザの総合的なエクスペリエンスを一枚絵で把握、検証することができるのでサービスデザインの代表的なツールではありますが、サービスとユーザ間のタッチポイントを形成するステークホルダーが十分に配慮されていません。ユーザに歩み寄るもその背景にある自身の組織形態やオペレーションの結果として存在しているサービスであるという理解を早期に促さなければ、サービスデザインは成立しないように思えます。

各種ステークホルダーのサービスとのつながりやステークホルダー間のつながりを分析する「Stakeholder Map(ステークホルダー・マップ)」、サービス全体の青写真を描く「Service Blueprint(サービス・ブループリント)」がその参考になります。Customer Journey Canvas と統合することも可能です。

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(参照元:Embedding Innovation in Service: a SECI+Design Frameworkーカスタマージャーニーマップの下部に、提供しているサービス、プロバイダー及び関係するサポーターのプロセスを記載する欄が含まれている。)

本書ではこれまでにご紹介したサービスデザイン・ツールを通じて、サービスデザイン思考の5原則を解説しています。

  1. ユーザ中心(User-centered)ーサービスはユーザの目を通して体験されるものである
  2. 共創(Co-creative)ー すべての関係者がサービスデザインのプロセスに関わる
  3. 連鎖(Sequencing)ーサービスは、相互に関係する活動の連続として可視化する
  4. 根拠に基づく(Evidencing)ー無形なサービスは、物理的な人工物によって可視化する
  5. 全体的(Holistic)ー サービス全体の環境をよく考慮する

カスタマー・ジャーニー・マップにストーリーボードのような写真を同時に掲載することでユーザ中心性を維持するなど、各原則に基づいたアドバイスと共に豊富な事例を紹介しつつ、ユーザ調査からプロトタイプまで幅広いサービスデザイン活動を取り扱っています。

Service Design: From Insight to Implementation

The value of gaining real insights from all stakeholders-customers, staff, and management-is only half of the story. Translating these insights into a clear service proposition, and experience prototyping the key touchpoints, are essential.

(すべてのステークホルダーや顧客、スタッフ、そしてマネジメントから深い洞察を得ることはサービスデザインの本当の価値ではありません。本来の目的は、これらの洞察をサービス提供価値へと昇華させること、及び主となるタッチポイントを実際に共創していくことにあります。)

This is Service Design Thinking」は手法やツールを軸にサービスデザイン論を展開していましたが、ローゼンフェルドより出版されたもう1つのサービスデサインの教科書「Service Design」は その前段となる、サービス科学や理論に重きを置き、必要となるマインドセットやセンスをエンタープライズの観点から紹介しています。

Service Design: From Insight to Implementation Service Design: From Insight to Implementation
Andy Polaine Lavrans Løvlie Ben Reason

Rosenfeld Media 2013-03-13
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Services are [...] relationships between providers and customers, and more generally, that they are highly complicated networks of relationships between people inside and outside the organization.

(サービスは プロバイダーとカスタマー(顧客)とのコミュニケーションであり、それ以上に組織内と組織外の人間を繋ぐ、複雑化するコミュニケーション・ネットワークのことです。)

本書で良く言及されているフレーズは「コミュニケーション・ネットワーク」でした。実態としてのサービスは、あくまでも組織内と組織外のヒトを繋ぐフィルターであり、ヒト対ヒトのコミュニケーションが発生しています。サービスにおけるエンタープライズとカスタマー(顧客)の関係性については下記図にまとめられているとおり、エンタープライズはカスタマー(顧客)に対して「信頼」を提供し、カスタマー(顧客)はエンタープライズに対して「価値」を提供します。双方の繋がりによって構成されるサービスを現したこの図を、本書は「Service Relationship Model(サービス・リレーション・モデル)」と読んでいます。

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(参照元:Flickr from Rosenfeld Media

サービスとサービスの繋がりも存在します。サービスデザインの落とし穴のひとつは、オンライン上の活動を、対象サービス内に限定してしまうことだと思います。Google によると、意思決定前に複数の情報リソースを参照するユーザ数がこの2、3年で2倍以上増加したというリサーチ結果もあります。クロス・チャネルならぬクロス・サービスへの理解を深めるために、「Service Blueprint(サービス・ブループリント)」よりもマクロな観点から対象サービスを取り巻く環境などのメタ情報、及びその他サービスとの繋がりを可視化した「Service Ecology Map(サービス・エコロジー・マップ)」がとても印象的でした。

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(参照元:Flickr from Rosenfeld Mediaーその他サービスとの繋がりをだれが、いつ、どこで、なにを、どのように、なぜの軸で整理し、モチベーションのトリガーとなっている要素に印を付けている。)

Service Ecology Map(サービス・エコロジー・マップ)」の目的は、サービスの経済圏に関与するステークホルダーを出来る限りすべてマッピングし、繋がりを可視化することで対象サービスに間接的/直接的に影響のある因子を特定することにあります。加えて、それぞれの因子の位置関係や役割を再編するなどして新しいコンセプトの計画にも役立てることができるので、事業開発の分野などにも応用できそうです。

それぞれの手法をビジネスモデル・キャンバスを軸にまとめてみると、下記のような関係図・プロセスになります。

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サービス・エクスペリエンスをデザインするために必要なマインドセット

最後に、今回ご紹介した2冊でも繰り返し言及されていますが、サービスをデザインする上で必要なマインドセットをまとめてみました。

  • 人々「のために」デザインするのではなく、人々「と一緒に」デザインする。
  • サービスは(組織内・組織外問わず)人々の共創によって創られる。
  • サービスの質はユーザの期待と実際の体験のギャップによって決まる。
  • ユーザだけではなく、エンタープライズ全体もデザインする。

更に、先月末に米国のサンフランシスコに拠点を置く世界初のユーザエクスペリエンス・デザインを専門するデザイン・コンサルティング会社 Adaptive Path を訪れた際に担当者が語った言葉がとても印象的だったので、忘れないように追加したいと思います。

  • UX(ユーザエクスペリエンス)かSX(サービスエクスペリエンス)かではなく、サービス(無形)かプロダクト(有形)かで考える。
  • サービスデザインはチェンジ・マネジメントだ。

先ずはひとつめ。これは「The Elements of User Experience」の著者で有名な Jesse James Garrett が口にした言葉です。サービスデザインを手掛ける事業を新たに設置し、ユーザエクスペリエンス・デザインを表に出さなくなった Adaptive Path の彼ならではの回答であると思います。前述したとおり、サービスデザインはユーザエクスペリエンス・デザインの最終到達地点であり、この両者は比較されるべきではありません。

ふたつめはエンタープライズのデザインに大きく関わってきます。Adaptive Path の事例を伺っていると、カスタマー・ジャーニー・マップをプロジェクト関係者全員で描くワークショップを開催した際に、あわせてサービス・プロバイダーの人事部やプロセス・デザイナーを招いたそうです。プロセス・デザイナーは日本に置き換えると工程改善や生産管理に相当する部門だと思われますが、サービス提供価値に従ったサービス体験の実現に向けて、いまもオペレーションの改善に向けた人材強化を続けているとのこと。それはまさにチェンジ・マネジメントであると話します。

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