IAによるIAのためのIAイベント-World IA Day 2013 Japan #WIADj

 

2月9日の「肉の日」に「World IA Day (WIAD) 2013 Japan」を開催しました。World IA Day は、IA(情報アーキテクチャ)のコミュニティに関わる人々を結集するための年に1度のお祭りで、今回がその第2回目となりました。WIAD は全世界を通じて情報やアイディア、リサーチ結果を共有することを目的とし、今年は世界15の都市で同じ2月9日に同時開催されました。

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WIAD では毎年全世界の共通テーマが設けられ、昨年は「理解」の構造をデザインする、というテーマを元に講演やパネルディスカッションなどが行われました。基本的にプログラムは各会場で自由に構成することができ、今年は未熟ながらもローカルコーディネータとしてコンセプト設計からプログラム構成までを十数名の運営スタッフと一緒に担当させていただきました。

そして2013年2月9日。今年も昨年度同様に東京大学本郷キャンパスで開催する運びとなりました。

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そんな WIAD 2013 の全世界共通のテーマは「IAの価値体系を探求・拡大する」です。テーマは全世界共通ですが、ニーズやトレンドに応じて各会場ごとにユニークなローカルテーマを設定することが可能であり、WIAD Japan ではローカルテーマとして集合知とIA(情報アーキテクチャ)」を掲げました。

ウェブのユーザが生み出した膨大なデータを分析、解釈しサービス設計に利活用する。

正にIAのそもそものコンセプトである「探している情報を組織化、文脈化することで見つけやすくし、見つけた情報をわかりやすく伝える」に立ち返り、IAの価値体系を再認識すると共にIAの分野における今後の位置づけや可能性、役割を明確化ないしは問題提起することを目指しました。

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第1部では集合知としてのIA」と題し、3名のスピーカーにご登壇いただきました。これらのセッションではアメリカのIA、Peter Morville と Lou Rosenfeld による書籍「Web情報アーキテクチャ」がもたらしてくれたトップダウンの情報整理観点、そして以降のWebテクノロジーの発達に伴い、CGMやビックデータに代表されるようなボトムアップの情報整理観点を取り上げました。

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  • ウェブサービス構築における概念整理と情報整理ーYahoo!知恵袋の経験から / 岡本 真(アカデミック・リソース・ガイド株式会社)
  • データ活用からビックデータの彼方へー技術的特異点(Technology Singularity)その二つのFace / 森 正弥(楽天技術研究所)
  • 推薦エンジンとユーザエクスペリエンス / 関 喜史(株式会社Gunosy)
  • パネルディスカッション / 岡本 真、森 正弥、関 喜史、坂本 貴史(ネットイヤーグループ株式会社)

第2部は「IAのメタデザイン」と題し、パターン・ランゲージアプローチのご紹介を踏まえて第1部で取り上げた現象を如何にパターン・ランゲージ化するか、あるいはできるのか、について議論する場を設けました。

  • パターン・ランゲージによる自生的秩序の支援 / 井庭 崇(慶應義塾大学
  • パネルディスカッション / 井庭 崇、長谷川 敦士(IAAJ)

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そして最後は WIAD Japan の運命メンバーでありながらIAの第一線で活躍されているIA(インフォメーション・アーキテクト)の皆様にご登場いただき、第1部と第2部のそれぞれの観点や課題意識を持ち寄り、クロージングとして以上から導き出されるIAの存在意義について議論しました。

  • クロージングディスカッション / WIAD-奥 いずみ、佐藤 伸哉、坂本 貴史、村越 悟、長谷川 敦史

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連休の初日にも関わらず、計139名の方にご来場いただきました。改めまして、足をお運び頂きありがとうございました。ゲストスピーカーの皆様、スポンサー企業様も当イベントにご協力・ご協賛いただきありがとうございました。

今回は意図してインフォメーション・アーキテクトでは「ない」方にスポットをあてています。情報アーキテクチャとしてのIAを自社サービスの設計や研究内容に取り入れながらご活躍されている方々にご登壇いただくことで、かつ間のパネルディスカッションで(浅野 紀予さんの言葉をお借りしますが)ハードコアIAとして第一線で活動されているインフォメーション・アーキテクトの方々を交えて翻訳していただくことで様々な角度・尺度から情報アーキテクチャとしてのIAとインフォメーション・アーキテクトとしてのIA、双方の提供価値について考察する1日にしたいという想いがありました。また、スタートアップやサービスプロデューサー、データサイエンティスト、アカデミックといった様々な分野からのスピーカーをお招きすることでIAの価値体系を模索するための広い視座・視点・価値観をインプットしていただきました。

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昨今では別の文脈でデザインの上流工程やデザイン手法自体の見直しという観点からユーザエクスペリエンス・デザインやそれを実現するための人間中心設計(HCD)といった部分まで進出しており、IA Summit でもコンテンツ戦略の一環としてメタデザインの必要性を訴えるセッションやユーザ体験の可視化について取り上げるセッションが多く登場しています。それだけIAの分野の抽象度が高いということが言えると思います。だからこそ、Reframing IA(今年の IA Summit では同名のワークショップが用意されています)の必要性を強く感じています。そのためにも、当イベントがご参加いただいた皆様の中に少しでも彩りを加えるきっかけになれば良いなと思っています。

むしろ、坂本 貴史さんが自身の著書「IAシンキング」で何度も言及されているように、IAは決して専門家ではなく、本質的なスキルであるという事実をもっと世の中に発信したいなと思っています。

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最後に、今回のイベントを通じて試験的に導入したリアルタイム・ドキュメンテーションの記録や各セッションの要約記事の公開を計画しております。未だ話し足りない、腹落ちしない、という方はスピンオフ・イベントも計画中ですので是非ご参加ください。

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改めまして、ご参加いただいた皆様に感謝申し上げます。ありがとうございました。

 

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