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無銭優雅

2年くらい前に、純愛小説ブームとされていた年がありました。主人公のどちらかが死に、悲劇のヒロインを演じている場面には、何度も遭遇したことがあるような気がします。そこで感じられることは、

「死って、恋のすげえ引き立て役なんだよなあ。」- pp10

ということだと思います。死は確かに恋の引き立て役かもしれないけれど、エンターテイメントの要素としてたやすく使うべきものではないと、本書を読み終えて思うようになりました。自分の知らなかった一面や知らなくて良かった感情がむき出しになるなど、死別というのはもっともっと重いはず。

無銭優雅 (幻冬舎文庫)無銭優雅 (幻冬舎文庫)

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本書の全編に渡って、「登場人物の誰かが死ぬ」恋愛小説からの引用が散りばめられていて、「無銭優雅」というまた1つの恋愛小説を読むことになります。本書の主人公が「死別」という物語の装置をを自分達の恋愛に使うことを提案し、死があるからこそ引き立てられる恋の部分をふたり楽しんでいる様子はまさに優雅でした。

「私たちは私たちで独自の道を進んでいますの。私と彼という組み合わせは、この世にひとつきりしかないのだから、それだけで独自だと思い込んでいますの。」- pp100

くだらないところほど良く、他の恋愛小説のようにムードのかけらもないくらいが、かえって登場人物の2人を特別な存在として見ることが出来ます。

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