Digital Garage さん主催の『THE NEW CONTEXT CONFERENCE 2011 Fall』に参加してきました。まさに文化の日に相応しい1日となりました。3回目となる今回は「Lean Startup Camp Tokyo」と題し、このブログでも度々取り上げているインターネットビジネスを効率よく短期間で立ち上げる手法として注目を集めている「Lean Startup」に焦点を当て、米国ベイエリアを始め世界各地から豪華なスピーカーを招き、Lean Startup の実践についてパネル討論形式で行われました。
カンファレンスは丸1日かけて行われたため、一部のハイライトをお伝えします。詳しくは UStream チャンネルあるいは Togetter をご覧ください。
Opening Remarks by Joi
開演の挨拶は MIT メディアラボ所長に就任され Digital Garage の共同創業者兼顧問の伊藤 穰一さん。
インターネットを主体として考えたとき、時代は2つに別けることができる。1つは「BI(Before Internet)」、Waterfall 型の開発が主流となっていた時代。もう1つは「AI(After Internet)」、Creative Commons や W3C などの Open Stock の標準化を推し進める団体と Cloud などの技術によって促進されてゆく Open Source を活用したアジャイル開発が主流となってきています。
そんな AI を生きる我々に対し、Joi さんが発したメッセージは2つ。
- Throw away your map, only compass(目指す先のゴールや道筋(Specification)に頼らず、砂漠を歩いているかのごとく隅有性を楽しんでみること)
- Embrace Serendipity(偶然性からくる可能性を信じること)
Keynote by Ian McFarlan
トップは Digital Garage の CTO であり、シリコンバレーでアジャイル開発のコンサルティング会社を運営している Ian McFarland さんの基調講演です。
- Design impacts profit(デザインは利益を左右する)
- 問題を摘出するための時間は Waterfall と比べて Agile は圧倒的に早い
- テストは問題提起から原因究明、ソリューションの提案・提案と考え、学ぶためデザインそのものである
- Lean Startup は Hypothesis(仮説)と Synthesis(統合)の行き来である
Finding The Right Idea 1: Design as Strategy by Jesse James Garrett
続いては Adaptive Path社で UX デザイナーとして活躍され、Information Architect(インフォメーション・アーキテクト)の基礎を築き上げた、(ファッションも)神のような存在である Jesse James Garrett さんです。
全体を通じてとってもシンプルでしたが、Apple や Sony の事例を交えて James がプッシュしていたのはこの1点のみでした。
"What is the highest compliment?(あなた(サービス提供者)にとって一番の褒め言葉はなんですか?)"
"This is might be it. I can't live without it.(きっとこれでしょう。私はそれ(サービス)なしでは生きられません。)"
それはきっと、beautiful(美しく)・elegant(優雅で)・solution(ニーズに応えていて)・that works(使えるもの)であらなければならないと話します。
パネルディスカッションも行われました。左から Ian さん、JJ Garrett さん、ロフトワーク代表の林千晶さん、そして IDEO Tokyo の Michael Peng さん。「デザインの定義」という議題で JJ Garrett さんの言葉 "Design is not how it looks, it's how it behaves.(デザインは見た目がすべてではなく、どのように振る舞うかで決まります。)" が印象に残りました。
Finding The Right Idea 2: Minimal Viable Product by Kate Rutter
来週月曜日(7日)にも ShibuyaUX のスピーカーとしてご参加いただく Janice さんと同じく Lean UX を専門とするコンサルティング会社 LUXrco に在籍し、米 UX デザインコンサルティングファームの Adaptive Path社の CEO を勤めていた Kate Rutter さんも登場されました。
Kate さんはミニマムかつ実用的な製品あるいはサービスを早く、安くローンチして検証後、進化させていきながらユーザのニーズやウォンツに応えていく Minimal Viable Product(MVP)という思想を提唱されています。
"Are you learning throughout your customer or product? (あなたは自身のサービス・製品またはユーザから何を学んでいますか?)"
これまではエンドユーザからのフィードバックを得られる仕組みそのものが不足していましたが、アクセス解析やユーザテストなどの手法が浸透してきているため、フィードバックを得ることが容易になってきました。では、そこから何を学び、何に活かすのか、考えなければなりません。
Practice of Lean Startup2: Introduction by Janice Fraser
Janice さんは8月末に同じ場所で開催されたイベント実践的 User Experience ワークショップと同じ内容をピックアップされていました。
イベントの冒頭でお話する機会があったのですが、Lean Startup から私たちが学べることは何ですか?ととっぴょうしもない質問を投げかけたところ、Lean Startup は失敗(リスク)はつきものであって、それは日本人であろうと外国人であろうと文化的な背景は関係はない、と指摘します。ただ、1つ言えることはそれは失敗(イベントでは Fail という言葉で参加者は表現されていました)ではなく、発見・学習であるということを理解しなければいけません。
最後に、イベントを通じて Lean や Agile などの言葉が多く言及されていましたが、Lean のエッセンスである顧客開発やピボット(ビジネスの方向性の修正)、無駄を省く開発手法はトヨタ生産式や Ruby など既存のシーズを組み合わせているに過ぎません。もちろん、ところどころで使用しているツールや実施機関などの差異はありますが、目新しいことは一切ありません。ただ、これをきっかけにみんながユーザと向き合ってビジョンないしはカスタマーセントリックデザインを序々に適応させていくことを願ってやみません。
紹介された書籍
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