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カタコンベ

2004年に24歳の若さ(当時の最年少記録)で第50回江戸川乱歩賞を受賞した神山 裕右さんのデビュー作「カタコンベ」を読了しました。私たちには普段馴染みのないケイビングに着目したミステリー小説です。

カタコンベ
カタコンベ神山 裕右

講談社 2004-08-07
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カタコンベ(英:catacomb)は、地下の墓所のこと。もともとはローマのサン・セバスティアーノ・フォーリ・レ・ムーラ教会の埋葬場所のことを意味していたが、死者を葬る為に使われた洞窟、岩屋や地下の洞穴のこと全般を指すようになった。
via. カタコンペ - Wikipedia

何と言っても本作の舞台となっている地底や鍾乳洞の迫力には圧倒されます。岩の感触、身体を押し流す水流の圧力、全体の大半を占める暗闇の恐怖や崩れる洞窟に押し潰される恐怖、加えて「死」に直面する恐怖がこれでもかというくらいに文体から伝わってきます。

「死のイメージを払拭するには、強い意志の力が必要だ。どうすればいい?どうすればこの絶対的な存在に打ち克つことができる?」 - pp169

地底描写に加えてミステリー小説としての要素も組み込まれており、「死」と「謎」の二重の危機が地底におけるサスペンスを極限にまで高めています。帯のキャッチコピーにもあるとおり、迫りくるデッドラインに一気読み必至。読み終わるのが大変惜しい作品です。

「人間ってのは厄介な生き物でさ。長いこと生きていると、自分の存在理由を知りたくなるときがあるんだ。どうして自分はここにいるのか、何のために生まれてきたのか。世間では、そんなことを考えるのは思春期のガキだけだと思われてるけど、実はそうじゃないと思う。どれだけ歳をとっても、その疑問を抱えていると思うんだ。消えたわけじゃない。日頃は胸の奥底に隠しているだけでね。」 - pp210

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