読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

UXploration

Explore the art of UX persuasion

UX デザインに求められる「3つの目」

keyword

* 当記事は UX Milk に寄稿させていただいた記事の転載です。

「3つの目」とは?

言い古された言葉ではありますが、みなさんは物事を捉えるための「3つの目」を聞いたことはありますでしょうか?

  1. 獲物を見つけるかの如く、全体を俯瞰する「鳥の目」
  2. 近づいて様々な角度から細部を見る「虫の目」
  3. 全体の流れを掴む「魚の目」

f:id:separate-ks:20160421184300j:plain

物事を捉えるときには特定の視点に偏るのではなく、複眼で捉えることで物事の真理を理解することができると言われています。わかりやすく言えば:

  • マクロな視点
  • ミクロな視点
  • トレンドを把握する視点

と区別することができます。ネットで検索をすれば経営者やリーダーに求められる条件の1つとして語られることが多い「3つの目」ですが、私は UX デザインにこそ応用すべきであると考えます。

UX デザインにおける「3つの目」とは?

昨月、大阪にて開催された HCD-Net サロンにて私は「サービスデザインの骨格と視点」というタイトルでサービスデザインへのパラダイムシフトに伴う視点の変移についてお話させていただきました。当日発表させていただいたスライドはこちらよりご覧いただけます。

その際に、サービスそのものを俯瞰して捉えるための手段として事例と共にサービスブループリントをご紹介しました。既にご存知の方は多くいらっしゃると思いますが、サービスブループリントとは対象のサービスを1)エンドユーザー視点のフロントステージおけるユーザー体験と、2)サービス提供者視点のバックステージにおけるユーザー体験とで分けて可視化するツールです。

f:id:separate-ks:20160421184415j:plain

エンドユーザー観点で語られることが多い UX デザインですが、冒頭で述べた「鳥の目」でサービスそのものを捉えると、サービスとはエンドユーザーとサービス提供者間のインタラクションの連続性によって成立するコミュニケーションであると理解することができます。また、その中で我々が関わることが多いウェブサイトやアプリの設計やデザインはエンドユーザーとサービス提供者をつなぐ接点の一部であり、「虫の目」が活きる領域です。

最後に、前述のバックステージおけるユーザー体験、すなわちサービス提供者視点でサービスを捉えなければ実行性がありません。サービス構想を可能にするためのオペレーションや組織構造などをデザインの対象に含めるためには、正に水面下からサービスを捉える「魚の目」が求められます。

f:id:separate-ks:20160421184505j:plain

まとめると、UX デザインにおける「3つ目」は以下のようにまとめることができます:

  1. 鳥の目:サービス全体のジャーニーや接点を俯瞰して捉える
  2. 虫の目:ひとつひとつの接点を担う細部のタッチポイントを捉える
  3. 魚の目:サービス提供者のバックステージにおける流れを捉える

なぜ、UX デザインにも「3つの目」が必要か?

UX デザインは主にウェブ業界で語られることが多く、その対象もウェブサイトやアプリに閉じてしまいがちです。

本来であれば、今回ご紹介したサービスブループリントに従ってユーザーの体験を可視化してみると、デザインの対象はウェブサイトやアプリに閉じないべきなのです。虫の目だけでサービスを捉え、デザインの対象を限定してしまっては自分が知らない問題に直面することはなく、虫の目からしか見えない問題のみが解決の対象となってしまいます。

当たり前ですが、自分の知らない問題は解決できません。UX デザインを問題解決として定義するのであれば、本来解決すべき問題とはなにかを継続的に探る必要があります。そのためには全体を俯瞰して見る鳥の目や、サービスの裏の流れを捉える魚の目を養うことが求められます。ただ、昨今の UX デザインに関するイベントや勉強会の多くは「虫の目」留まりになっているのではないかと危惧しています。今回ご紹介した「UX デザインにおける3つの目」はどれも必要であり、ひとつでも欠けてしまうとそれぞれの良さが失われてしまいます。

言い古された「3つの目」ですが、UX デザインにも応用することによって、これまで以上に本質的理解が進むのではないでしょうか。

関連記事:

sprmario.hatenablog.jp

サービスデザインの骨格と視点

action

当記事は2016年3月4日に大阪にて開催された第61回HCD-Netサロンでお話させていただいた内容のフォローアップになります。

f:id:separate-ks:20160320213938j:plain

f:id:separate-ks:20160320210152j:plain

はじめに

今回のプレゼンテーションでは「デザインを捉えるスケールの拡張」をキーワードに、サービスデザイン特有の視点とは何か?からサービスデザインを紐解いていきました。

これまでのデザインは例えるならば「虫の目」に限定された解釈がなされたことが多かったと思いますが、サービスデザイン時代においては:

  • スケールアウトしてサービスを捉える「鷹の目」
  • サービスを支えるバックステージをもデザインの対象に含める「魚の目」

の視点が求められます。それをわかりやすく解説している例として「Powers of Ten」があります。

これまでのUXデザインとは何が異なるのか?

サービスそのものの定義やサービスデザインの定義は過去のエントリーで何度も言及しているため割愛しますが、これまでのUXデザインと異なる点は2つあります。

  1. デザイン対象のスケール変動:人間中心思想への原点回帰
  2. ユーザー接点の拡張:コミュニケーションのデザイン
デザイン対象のスケール変動

f:id:separate-ks:20160320211654j:plain

Before: これまではペルソナに代表されるような特定のユーザーのみを対象とした分析やアプローチが中心であったが故に、ユーザーの検討行動や意思決定行動に関与するその他ユーザー、ないしはステークホルダーを配慮しきれていませんでした。

After: 真のユーザーを見極めるため、かつユーザーのコンテキストを把握するためユーザーを取り囲むステークホルダーの把握やユーザーの理想体験の実現に向けた基盤を整備するためのオペレーションをも対象とした分析やアプローチが求められるようになりました。

これは結果として、ユーザー中心設計から本来の思想である人間中心設計への原点回帰を意味しているのではないでしょうか?

ユーザー接点の拡張

f:id:separate-ks:20160320212231j:plain

Before: サービスが保有する個別の接点またはタッチポイントのみに限定したチャネル戦略(例:シングルチャネル、マルチチャネル)やユーザー体現に留まっていました。

After: あらゆる接点またはタッチポイントを統合することで個別の接点に依存しないチャネル戦略(例:クロスチャネル、オムニチャネル)やユーザー体験の実現が求められるようになりました。

その背景にあるのは、ユーザーはその瞬間に置かれている状態によって利用可能チャネルを自身で取捨選択し、行動するようになってきたからです。

その期待に応えられない状態、それはチャネルを横断しても一気通貫のユーザー体験モデルが構築されていなければ断片的な体験をもたらすようになり、利用に至らず離脱に直結しやすくなります。

モノシステムからエコシステムへのパラダイムシフトを見極める

これまでの話から、UXデザインからサービスデザインへのパラダイムシフトの1つの特徴として、独立したタッチポイントに限定したユーザー体験からの脱却を意味し、テレビやPC、雑誌や店舗などサービスが保有するタッチポイントを統合したシステムとして捉えることが挙げられます。

例え複数のタッチポイントを形成できていたとしても独立した価値/生態に留まってしまうケースは多くあります。ここで言うエコシステムとは文字通り、ユーザーとサービス提供者の相互作用の生気によって創造・構成される「システム」のことを指します。あらゆるタッチポイントが統合した価値として創造され、フロントステージにおけるユーザーとバックステージにおけるサービス提供者間の連続した、または継続したコミュニケーションが成立している状態を指します。

f:id:separate-ks:20160320213328j:plain

サービスを利用する断片の側面だけを視るのではなく、ユーザー体験を支えるバックステージのプロセスやシステムをも視野に入れ、メタ視点で整合性を図るプロセスこそがサービスデザインなのです。

サービスをシステムとして捉えなければ、知らない問題に直面することはありません。そして自分の知らない問題は解決できません。目に見えないものを「見える化」すること、そしてサービスに関わる人々の想いを結び、届けることで無視されることはなくなるのではないでしょうか。

People ignore design that ignores people.2
人々を無視したデザインは、人々から無視される。

- Frank Chimero

事例などは割愛していますが下記参考資料よりご覧になることができます。

関連資料: 

www.slideshare.net

 

2015年アーカイヴ

登壇イベント

  1. 2015年1月10日「HCD-Net 教育セミナー「第7回サービスデザイン方法論フォローアップ講習会」:組織とサービスデザイン―サービスを基点とした2つのユーザー体験を考える
    フォローアップ記事スライド

  2. 2015年1月16日「Lean Startup Update!! 2015(リーンスタートアップをアップデートする会)」:Lean UX Quest in Tokyo
    フォローアップ記事スライド

  3. 2015年1月27日「Design dot noom」:サービスのグローバライゼーションとローカライゼーション
  4. 2015年2月5日「schoo」:優れたUXを実現するための人間中心デザインとは?
    フォローアップ記事スライド

  5. 2015年2月28日「産業技術大学院大学「人間中心デザイン」」:HCD導入設計論
    フォローアップ記事スライド

  6. 2015年4月11日「LEAN UX Japan Conference 2015

  7. 2015年4月29日「第16回情報デザインフォーラム」:LEAN UX デザインにおける CPS 仮説検証モデル
    スライド
  8. 2015年5月31日「HCD-Net フォーラム2015」:人間中心設計の表と裏
  9. 2015年7月11日「UXシンポジウム沖縄2015」:伝わる仕組みとサービスデザイン
    スライド
  10. 2015年7月18日「Tech in Asia」:Story is Strength
    レポート
  11. 2015年7月31日「UX Sketch Vol.2」:事業計画に求められる2つの「プロペラ」
    フォローアップ記事スライド

  12. 2015年8月22日「NIKKO 20 years アイディア CAMP」:伝わるしくみを考える
  13. 2015年9月8日「UX Jam #2」:Empathic Design 共感力を取戻し、そして育み、発揮する
    フォローアップ記事スライド

  14. 2015年11月22日「UX Japan Forum 2015」:Silent Minority サイレントマイノリティ
    フォローアップ記事スライド

インタビュー/掲載記事

  • 【インタビュー】Mediumが生み出す新たな価値「ストーリー」とは?

  •  【インタビュー】Twitter創業者が繰り出す、Mediumというアンチテーゼ

  • ユーザーは“嘘”をつく 声にならない本音を探るための5つのステップ

  • 「ユーザーをわかったつもり症候群」からどう抜け出すか 勝つサービスを作るために必要なこと

  • 株式会社リクルートテクノロジーズ 坂田 一倫さん

  • 【インタビュー】UXって結局何なんですか? 大学生が専門家に聞いてみた

    【インタビュー】UXって結局何なんですか? 大学生が専門家に聞いてみた

This work is licensed under a Creative Commons Attribution 4.0 International License.
Others, like quotes and images belong to its original authors.