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First Time User Experiencesーファーストタイム・ユーザエクスペリエンスを制する8つのパターン

First Time User Experiences (FTUEs) というコレクションを集めている方がいます。このコレクションでは文字通り、サービス対ユーザーの最初のタッチポイントとなるコミュニケーションを司る「First Time User Experiences(ファーストタイム・ユーザエクスペリエンス)」をアプリ中心の事例と共に紹介しています。

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((c) First Time User Experiences

これからご紹介するブログ記事「Patterns for new user experiences」ではその彼女が趣味で集めてきたコレクションを分析し、見出したファーストタイム・ユーザエクスペリエンスにおける8つのパターンを紹介しています。解説はもちろん、長所と短所、デザイン上の課題、及びその事例を各パターンごとに丁寧に紹介しています。

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Show Interact, don’t tell(説明はするな、インタラクションを重視せよ)- Krystal Higgins 

なぜファーストタイム・ユーザエクスペリエンスなのか?

リーンスタートアップの手法を3日間に渡って体得することができるプログラム「Lean Startup Machine Tokyo」で担当させていただいたセッション「First Impressions Matter: LeanUX Design of Landing Page」で僕は以下のように述べました。

サービスやプロダクトにとっての Value Proposition(サービス提供価値)は、対象のビジネスと顧客ニーズが交わるポイントで初めて証明され、評価されることになります。つまり、スタートアップに必要なのは顧客とのファースト・コンタクト(初めての接点)において共感を通じて意味を理解してもらうことと、それを的確に伝えることだ思っています。なぜならその後は一生使ってもらえない可能性があるからです。僕はこれを「Design for Meaning(意味のあるデザイン)」と呼んでいます。

情報過多時代、情報収集が非常に便利になり、いつでもどこからでも検索ひとつで探したい情報に到達できるようになりました。例え人伝で認知し、興味をもったとしても理解を深めるためにはほとんどのユーザーは検索を駆使して対象の情報を探そうとします。そしてこのユーザーとのファースト・コンタクトの役割を果たすのが、ランディング・ページであったり、アプリの初回起動画面なのです。

  • 上記で触れた Value Proposition(サービス提供価値)はユーザーに十分に伝わっているでしょうか?
  • ユーザーの記憶に残りやすい構成になっているでしょうか?


これはスタートアップに限った話ではなく、新規顧客を取り込みたいと考えているサービスにもあてはまります。人は対象と接触した際に平均0.1秒の速さで無意識の内に第一印象を抱いていることがわかっています。そして、この第一印象はその後のアクションに大きな影響を及ぼします。僕がこのセッションで伝えたかったことは、第一印象(ファースト・インプレッション)の重要性と Value Proposition(サービス提供価値)を的確に伝える方法の2つでした。ユーザーはソリューションそのものに興味があるのではなく、彼等が抱えている問題を解決してくれる答えを探しているだけに過ぎません。

そして今回簡単にご紹介するファーストタイム・エクスペリエンスはそのファースト・コンタクトを設計する際に役立てられる、1つの原則でもあります。

尚、以降は「Patterns for new user experiences」の記事を和訳してご紹介します。

ファーストタイム・エクスペリエンスの8つのパターン

  1. サンプルの無料提供
  2. ウォークスルー
  3. セットアップ・ウィザード
  4. インラインの補足
  5. ガイダンス・ツアー
  6. コーチマーク
  7. イントロダクション
  8. サインイン

1. サンプルの無料提供

ユーザーにアカウントを開設してもらうことなく、一部機能(サンプル)を無料で利用できるようにするパターンです。30日間の無料トライアルもこのパターンに分類されます。より多くを利用したい場合にアカウントの開設を促すなど、動機付けとなる1つの有効な手段でもあります。

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メリット:
  • プレビュー(事前予知)によってコンバージョン後の質が向上する
  • ユーザーのリスク回避にも繋がり、ポジティブな印象を与えることができる
  • Value Proposition(サービス提供価値)をいち早く理解してもらうことができる
デメリット:
  • サンプルとなる一定量のコンテンツを生成する必要がある
  • ユーザーデータがどのように格納・利用されるのかを理解することができない
  • ユーザーが放棄しないよう、より強固なコミュニケーション戦略が必要とされる

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(TurboTax の SnapTax アプリでは 'Try It First(先ずは試してみる)'を提供していている)

2. ウォークスルー

ウォークスルー(またはプレイスルー)ではサービスのチュートリアルのようなエクスペリエンスを提供することでサービスの主軸となるシナリオやタスクをひと通り体験することができます。ウォークスルーでは良く一番始めに「リストを作成してみよう!」や「ゾンビをやっつけろ!」というようなゴールを設定され、通常のインタラクションに慣れてもらうことを目的としています。

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メリット:
  • ユーザーはウォークスルーをしながら学ぶことができる
  • ゲーミフィケーションの要領でスキルを会得するような感覚を与えることができる
  • 成功体験を早期に経験することでポジティブな印象を与えることができる
デメリット:
  • 実施中のタスクをスキップする機能が取り込みにくい
  • 説明書きが多くなり、放棄されてしまう危険性が高まる

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(Plants vs. Zombie 2 というゲームでは基基本シナリオを体験できる機能をオプションとして提供している)

3. セットアップ・ウィザード

セットアップ・ウィザードではサービスの利用にあたって必要な環境設定を順に追って完了させるためのガイドを提供します。このパターンは紙媒体のスターターガイドとして、またはパソコンの初期設定のようにデジタル媒体としても組み込むことができます。セットアップ・ウィザードではサービス利用に伴う最低限必要な設定をユーザーに遂行させる必要があるため、機械的なインターフェイスが非常に多いことが特徴です。

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メリット:
  • 複雑な環境設定をより理解しやすい形式として情報提供することが可能
  • 一定の設定が完了すれば以降の設定を自動で行うなど、その後のユーザーの負荷を軽減することができる
デメリット:
  • ステップ数が多ければ多いほど、放棄される危険性が高まる
  • エラー処理などによってユーザーが迷子になる恐れがある

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(日本でも話題の Fitbit では複数デバイスとの同期などが最低限必要な設定として含まれている)

4. インラインの補足

身の回りの多くのアプリにも適応されていますが、スポットのレイアウトや機能を補足するための情報として、ユーザーのインタラクションを邪魔しない程度にヒントとなるテキストやイメージが設けらているパターンです。画面から消去させることが可能な場合がありますが、多くはレイアウトや機能の一部として浸透しているケースがほとんどです。

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メリット:
  • 対象のレイアウトや機能とフォーマットを統一することで読みやすくなる
  • 一連の体験を大きく阻害することはない
  • コンテンツごとの関連性を強化することができる
デメリット:
  • レイアウトや機能と同化するため注意されずに無視される恐れがある

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(Polar という投票アプリでは投票の仕方やティップスの閲覧方法についてインラインの補足を用いている)

5. ガイダンス・ツアー

ウォークスルーのパターンと混在されやすいですが、ガンダンス・ツアーは個別のヒントがファーストタイム・エクスペリエンスにおける一連の体験内に散りばめられている様子のことを指します。良くツールチップやオーバーレイ、モーダル・ウィンドウ、オフラインであればステッカーなどのフォーマットで用いられます。サービス駆動のガイダンス・ツアーがあれば、ユーザー駆動のガイダンス・ツアーもあります。

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メリット:
  • ガイダンス・ツアーはユーザーのコンテクストに合わせた情報を提供することができる
  • タスクや説明を単一で提供することで、記憶しやすくなる
  • ユーザー駆動のガイダンス・ツアーであれば、ユーザーは自身のペースで進めることができる
デメリット:
  • サービス駆動であればユーザーを置き去りにしてしまう恐れがある
  • スキップできない場合はユーザーにフラストレーションを与えてしまうことがある
  • ヒントが散りばめられすぎると体験が分断化されてしまい、価値が発揮されない場合がある

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(Facebook Paper では投稿や共有などの細かなタスクを実行する際にガイダンスをユーザー駆動で表示している)

6. コーチマーク

馴染みのない単語かもしれませんが、サービス画面やアプリ内において透明なオーバーレイ上に機能やメニューの説明が表示されるパターンのことを指します。コーチ(監督)のように、どこになにがあるのかを示してくれます。テキストのみの場合があれば、矢印が画像を用いて補足されている場合もあります。

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メリット:
  • 実装コストが低く、ユーザーにとっても比較的馴染みのあるパターンである
  • 複数のコーチマークを同一のオーバーレイ上に表示することができる
デメリット:
  • 複数の情報が同一のオーバーレイ上に表示されるため、読まれない恐れがある
  • インタラクションなどの動的なコミュニケーション上の解決には繋がりにくい
  • テキストのみで構成される場合はテキストサイズが小さくなってしまい、可読性が低くなってしまう恐れがある
  • コーチマーク表示は一度切りの場合が多いため、再度表示させたい場合の回復が困難である

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(Flickr のアプリでは画面ごとに主要メニューや機能のガイドをオーバーレイで展開している)

7. イントロダクション

イントロダクションは、サービスの主要な機能や Value Propositon(サービス提供価値)を簡潔に説明しているパターンです。イントロダクションという名前のとおり、実際のサービスの体験が始まる前に展開されるため、ウォークスルーやガイダンス・ツアーとは異なります。イントロダクションの代表的なフォーマットには、スライドショーやビデオなどがあります。

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メリット:
  • イントロダクションはアンチ・パターン故にユーザーにメリットをあまり感じさせないが、以外に新規ユーザーをサポートするパターンが存在しないのであれば、イントロダクションが最適である
デメリット:
  • ユーザーのコンテクストを考慮していないため、コンテンツそのものが忘れ去られる恐れがある
  • すぐにサービスの利用を開始したいユーザーにとってはフラストレーションが溜まる

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(Fitstar アプリではイントロ映像が自動で再生されるが、Get Started でスキップできる)

8. サインイン

サインインはその名のとおり、アカウントの開設が必要とされる際に表示される画面のことを指します。イントロダクションを用いているサービスの多くは、その終わりにサインインを求めます。サインインに必要なフォームを新規ユーザーに押し付けることは避けるべきですが、他に逃げ道があれば別です。但し、このパターンではサインイン、サインアップ、または離脱以外に方法はありません。

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メリット:
  • 新規ユーザーにとって価値がない
デメリット:
  • リターンとして何が得られるのかがわからない
  • ユーザーとサービスの Value Proposition(サービス提供価値)の間に位置する、邪魔以外のなにものでもない

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 (例え匿名で利用できる secret のようなサービスでもアカウントの開設が求められる)

まとめ

いかがでしたでしょうか?この記事が優れていると感じた点は大きく分けて2つあります。1つはインターフェイスを細部まで研究されていること。もう1つはただパターン化するだけではなく、ユーザエクスペリエンスの観点から第三者的評価を用いているということです。

また、スクリーン内で表現できる要素がスマートフォンの普及などに伴い限定されてきている背景を受け、複雑化するサービスや機能とユーザーのニーズの差異を認識し、最適な教育効果をあげる「インストラクショナル・デザイン*1」が今後更に重要になってくると考えています。

今回ご紹介した、ファーストタイム・ユーザエクスペリエンスのデザインは正にインストラクショナル・デザインとも言い換えることができます。

もとは教育機関における授業設計や教材開発に役立てられてきましたが、教育を取り巻く環境を分析し、何が最も必要とされ、そして最適な手段なのかを見極めるためにとても効果的だと言われています。学生(今回の場合はユーザー)の学習効果を最大限発揮できるように授業(今回の場合は体験)や教員(今回の場合はサービス提供者)がゴールを決定するためにニーズの評価と分析を行い、導入し、評価を行います。

ファーストタイム・ユーザエクスペリエンスが大切にするファースト・コンタクトは、ユーザーのその後のジャーニーの足掛かりとなる最初のタッチポイントの重要性を問う、重要なテーマでもあります。

*1:インストラクショナルデザイン(英: instructional design、あるいはインストラクショナルシステムデザイン)は、教育の場などにおいて、学習者の自由度を保ったままで高い学習効果が生じることを意図して、具体的な計画を立てることである。

デザイナーとエンジニアのこれまでとこれから:D/E問題を考える

先日、日本デザイン学会 情報デザイン研究部会主催の研究会「エンジニアとの協業におけるデザイナーの役割と自負」が開催されました。発端となったのは、デザイナーによってどのような価値が生み出されているのか?更には、デザイン活動をする前に、その価値を相手に理解してもらい、価値創造を主体とした取り組みを増やしていくためには何が必要か?といったオンラインコミュニティ内で展開されていた議論でした。

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(主査の山崎真湖人さんより背景のご説明)

デザイナーがどんな価値を生み出しているのか?が周囲に伝わっていなければ、そのプロセスには誰も振り向いては来れません。これは、デザイナーが新しい価値を創造することが前提となっているインハウスのデザイナーや研究機関に所属するデザイナーの方々にはあまり重要には思えないかもしれませんが、デザイン活動は明らかに新しい価値を創造していくことを中心とした活動であるにもかかわらず、Shibuya UX コミュニティのメンバーとも接していて感じるのは、世の中からは価値創造を求めるデザイナーへの依頼はほとんど無いのが現状です。

では、価値創造はデザイナーが担うべきなのでしょうか?誰が担うべきなのでしょうか?でも確実に、その一翼はデザイナーが担えるものだと思っています。そして、「価値を創造している。」デザイナーであれば十中八九、そう自負しているのではないでしょうか。

本研究会「エンジニアとの協業におけるデザイナーの役割と自負」にて僕はソフトウェア開発プロセスにおけるD/E問題を取り上げ、デザイナーとエンジニア双方の自負と今後求められる役割を自身の経験を踏まえてご紹介しました。

ユーザエクスペリエンス・デザイナーとして、僕は「共創」をワークテーマに掲げています。手前味噌ですがコンセントではもちろん、スピーカー兼メンターを担当させていただいている Lean Startup Machine Tokyo、数々のスタートアップを支援させていただくきっかけとなった Movida Japan様のワークショップRace for Resilience を始めとする各種ハッカソンのメンター兼審査員など、これらの取り組みに共通しているのはモノづくり・コトづくりに関わる全員が、ユーザエクスペリエンス・デザインの観点から関わっていける「場」づくりだと思っています。

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(当日は多くのデザイナーの方にご参加いただきました)

D/E問題は存在するのか?

きっかけは過去の苦い経験からでした。当時、僕はユーザエクスペリエンス・デザイナーとして事業責任者、デザイナー、エンジニアの狭間で仕事をすることが多かったため、ウォーターフォール型開発プロセスが進むに連れデザイナーとエンジニアの事実と思いを目の当たりにしました。

設計書を忠実に再現し、美しい/綺麗と褒められることに喜びを覚え、ピクセル単位の細かな仕様策定に時間を割き、他者のデザイナーとの差別化を図るべく独自性を追求しているデザイナー。一方でスケジュール順守が最優先課題であり、保守や運用のしやすいシステムの構築を目標にバグが無い状態にすることに喜びを感じ、処理速度を追い求めるエンジニア。結果としてリリースされたプロダクトにデザイナーは頭を悩ませていました。

デザイナーとエンジニアのそれぞれの矜持の違いによって起きるD/E問題へと発展した原因には以下が挙げられます:

  • デザインの実装における課題(例:ミドルエンド実装)が認識されにくい
  • 設計書やデザインが100%再現できなかったとしても、良し悪しの判断がつけづらい
  • 誰のために?何のために?が忘れ去られ、エゴとエゴが対立し、非生産的な議論が展開される

なぜこのようなことが起きるのでしょうか?

  1. デザインの本質的理解の欠如
    デザイン=化粧と誤解されることもありました。追求すべきは使いやすさや心地良さであり、ただ色を塗るだけ、ただ仕様通りに機能をつくるだけでは実現されません。クリエイティブはユーザーとの接点を担う上で確かに重要な要素ではありますが、ユーザーはそれだけではサービスやプロダクトの良し悪しを判断しません。

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  2. 優先順位の逆転
    前述したとおりデザイナーとエンジニアでは着手する際の優先事項が異なります。特徴的なのは、開発工程が後ろになるにつれ、現場がユーザーから遠のいて行ってしまうことです。

  3. 共通言語の不在
    「これはしてはいけません、ここはいじらないでください。」といった注意書きに溢れた仕様書を何度も目にしてきました。これだけでは肝心な理由が抜けており、結果そのような状態に陥ってしまった際の回避策や事の重大さが理解されないまま、世に出てしまいます。

  4. 組織内のサイロ化
    スタートアップではない限り、デザイナーとエンジニアが同じ部署で仕事をしているケースは稀です。物理的距離が離れてしまうとそれだけコミュニケーション・コストが発生してしまいます。また、理解にも時間が要されてしまい、的確に意図や背景を伝えることが難しくなってしまいます。結果として作成される仕様書などのドキュメント類の作成に時間が費やされ、非効率です。

デザインの早期検討と主体性

後にこれまでの課題を払拭すべく、アジャイル開発にも取り組んできました。事業責任者やエンジニアなどの非デザイナーなステークホルダーと共に、プロジェクトの初期段階よりデザイナーと共にサービス内容や一連のユーザー体験を可視化し、今回の対象範囲や目的などを明確化する時間を設けるように心がけました。

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(Jeff Patton の Agile UX に改良を加えた「Agile Experience Design」の説明)

  • 利用してもらいたい/利用しているユーザーは誰か?
  • どのようなストーリー/コンテクストでサービスを利用するか?
  • ユーザーとのコミュニケーションを図る上で、トーン&マナーはどうあるべきか?
  • 結果として今回の対象となるサービスまたは機能はどのような価値を提供すべきか?

早期に共通認識を図ることによって、以降のスプリントでは修正による遅れが軽減され、デザイナーのみならず、エンジニアの稼働領域が広がったことで全員が「価値創造」を担うことができました。また、これまでは職能や職種に惑わされやることが決めつけられてきましたが、ペアで作業を行うことによってできるヒトが進んでやる主体的な取り組みが実現されました。

単なる開発履歴やステータスを記すではなく、「なぜユーザーに対してこれが大切か」、「これをすることでチームにどう貢献したいのか」という考えを共有することが大事なんですね。ー KAIZEN platformが伊藤直也氏とやってきた、開発現場の暗黙知をなくすチーム運営術【連載:エンジニアの幸せな職場】 - エンジニアtype

デザインマネジメントにおける思想的風土

製品責任者は社内政治的な動機から「保険」的な多機能化に走りがちです。失敗したときに「あれが無いから失敗したんだ」と言われないために。あるいは、他社事例の模倣にも走りがち。それに加えて稟議・合議制や「空気の支配」も強烈。それらの障害をはねのけて設計思想を初志貫徹するには、強烈な意志や力が必要です。そもそも「設計思想」があるのでしょうか。無い場合のほうが多いでしょう。日本企業では「価値」の話ができない。価値を語る土壌がない。何が「良い」のか、何が「正しい」のかという価値観の話をせずに、よいデザインが出来上がることなど稀です。(※)日本企業におけるデザインマネジメントの根本的問題は、日本社会の思想的風土にあります。ー 日本企業でしばしば見られる、デザインマネジメント上の問題点

 Lean UX で謳っている組織文化の醸成は、上記引用にあるデザインマネジメントにおける思想的風土の醸成でもあります。部門や領域横断のコラボレーションの実現によって冒頭の「価値創造は誰が担うか?」という責任転嫁は不要になりつつあります。代わりに、何が「良い」のか、何が「正しい」のかという価値観の判断は全員によって行われます。

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そして、デザイナーの役割においては「デザインをする」立場から「デザインを導く」立場へのマインドシフトが今後求められてくると思います。優れたデザイナーは優れたファシリテーターでもあるべきと共に、組織内における「コミュニケーションデザイン」は更に大事になってくるのではないでしょうか?

Design is about making things exactly as you want them.(デザインは、思想をそのままカタチにすることである。)- Bruce Mau

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(ラウンドデーブル・ディスカッションの様子)

セッション後はラウンドテーブル形式で議論をしました。それぞれが抱く「美しさ」とはなにか、デザイナーの教育はどう見直されるべきなのか、など実に示唆に富んだ気付きと学びが生まれました。続きが気になる方はぜひ Facebook のオンラインコミュニティを覗いてみてください。

関連エントリー:

ユーザーの行動・体験から要求を探る「コンテクスチュアル・インクワイアリー」

※本記事は Web担に寄稿した記事『ユーザーを本当に理解していますか? ユーザーの行動・体験から要求を探る「コンテクスチュアル・インクワイアリー」』からの部分転載です。

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((c) iStockphoto LP. All Rights Reserved.)

突然ですが、サービスをご担当されている方々に質問です。

  • 最近、自社サービスのユーザーと接したのはいつですか?
  • そのユーザーの本当の姿を正しく理解されていますか?

今回は、ユーザーの行動や体験から、アクセス解析やアンケート調査などではわからいユーザーが本当にもとめていることを探ることで、サイトリニューアルや仕事の改善効果の最大化を図るユーザー調査手法のひとつ「コンテクスチュアル・インクワイアリー」を解説します。記事の後半では、コンセントの2つの事例も紹介します。

コンテクスチュアル・インクワイアリーを行うメリット

「コンテクスチュアル・インクワイアリー」とは、特別な何かをするわけではなく、わからないことがあれば、手間を惜しまずユーザーに聞くというシンプルなアプローチです。画期的な何かが見つかるということを保証するものではありませんが、ユーザーに対するより深い理解と、プロジェクトを進めるにあたっての根拠となる情報を与えてくれます。

ユーザーに直接話を聞けばよいとはわかっていても、プロジェクトを進めるにあたり予算やスケジュールが限られているなか、何を聞けば良いのか、どうまとめればよいのかがわからず、聞くまでにいたっていないといった状況は少なくありません。また、さまざまな手法でユーザーの情報を集めていたものの、ユーザーが求めているものに近づけていないという問題を抱えている方もいるでしょう。

そうした状況下で、ユーザーへのヒアリングを効果的に行い有効な情報を得るための手続きとして、「コンテクスチュアル・インクワイアリー」と、インタビュー結果をまとめる「コンテクスチュアル・デザイン」をご紹介します。この記事を読んでみなさんもぜひ一度試してみてください。

ユーザーを理解する調査手法を4つのタイプに分けて理解しよう

コンテクスチュアル・インクワイアリーを説明する前にまず、ユーザー調査の分類について説明します。ユーザー調査は「量的調査」「質的調査」に分けられます。さらに、「発見を目的とした調査」「仮説の検証を目的とした調査」に分けられます。

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((c) IA 100: ユーザーエクスペリエンスデザインのための情報アーキテクチャ)

今回ご紹介するコンテクスチュアル・インクワイアリーは、ユーザーの思考や行動の本質的な発見を目的とした質的調査の代表的なユーザー・インタビュー手法のひとつです。

コンテクスチュアル・インクワイアリーは、あらかじめ質問項目が設定された一問一答形式のユーザー・インタビューではなく、ユーザーとの自然な会話により主体的な語りを促し、対象と課題に対する視点や行動を記述・モデル化する、文化人類学から生まれたアプローチです。

コンテクスチュアル・インクワイアリーの他にも、発見を目的とした質的調査には、ユーザーに記録を付けてもらう「日記調査」や、複数人を対象とした「グループインタビュー調査」などがあります。

どの調査も本質的なユーザー理解のために効果的ではありますが、ユーザーの行為や意図を直接的に理解しにくく、かつユーザー自身の理解や意見が周囲の環境によって影響を受けてしまうことから、得られる結果が調査の企画意図に沿わない恐れがあります。そのため調査結果を分析する際にこれらの関係因子を考慮する必要があり、調査する側のすべての関係者の理解が重要になってきます。

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では、どのようにコンテクスチュアル・インクワイアリーを進めていけば良いのでしょうか?どのようにプロジェクトに組み込めば良いのでしょうか?

続きはぜひ Web担に寄稿させていただいた記事『ユーザーを本当に理解していますか? ユーザーの行動・体験から要求を探る「コンテクスチュアル・インクワイアリー」でご覧ください。


最後に、ビッグデータ時代の到来とも呼ばれている昨今、自社サービスを利用しているユーザーの多くの情報をツール1つで取得できるようになりました。そのため、数字を介してユーザーの行動を探る機会も増えてきました。でも、ユーザーを「知ったつもり」になってはいないでしょうか?

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((c) iStockphoto LP. All Rights Reserved.)

ユーザーを「知る」ことは「理解する」ことと同じではありません。「理解する」ということは、ユーザーの行動ひとつひとつの背景にある意図や思考、文脈までを把握するということです。しかし、今や技術に頼る一方で情報閉鎖を自分自身に課してしまい、データは十分でもどう解析したら良いかわからないという事態に陥ってしまいがちです。たとえ量的分析からユーザー理解を強化し続けたとしても、数字で証明される結果の「なぜ」がわからないままになってしまい、改善の段階で行き詰まってしまいます。

結果として引き算をすれば良いのか、足し算をすれば良いのか、明確な方針が定まらないまま小手先の改善のみで終わってしまいます。このような状況を打破するためには、量的分析では理解しきれないユーザーの行動や思考の連続性や文脈性を考慮する必要があります。

そのために、解説してきたコンテクスチュアル・インクワイアリーの手法を活用して、ユーザーの本当の姿を正しく理解するようにぜひ試みてみてください。

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