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ニーチェはこう考えた - うじうじ、くよくよ、ニーチェも悩んで大きくなった

人間心理を深く突いた言葉をグサリと言い放つニーチェ。根底にあるのは、彼の神的存在として拝められていたショーペンハウアーの哲学でした。世界というのは、ほんとうは人間の力ではどうにもならない盲目的な力によって支配されている。だから、人間の本質はうじうじ悩むことにある。このうじうじをなんとかするためにはあきらめが肝心である。ペシミズム(悲観主義)と言われようが、ショーペンハウアーニーチェが唱える哲学の原点となっていました。

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ニーチェがそうだったように、当たり前の自分とその世界が驚かされるとき、崩れるとき、ひとは危機に陥ります。そのとき、小さくうじうじとした人間のあり方があらわれます。

失うことは人間にとってもっとも苦しいことだから、人間は先に進めない。ニヒリズムも生まれます。こうした苦しみのなかでも生きることを肯定できる方法はないか、ニーチェはそう考えたようです。そこで登場したのが「永遠回帰」という思想でした。永遠回帰は、「この自分の人生、この自分が生きてきた世界が一回ならず何回も何回も、永遠に巡ってくる、と考えてみろ」という思想です。世界に根拠や目的(ゴール)は存在しません。それでも、この思想を受け止められるかどうかでわたしたちが自分の生を肯定できるかどうかが決まると、ニーチェは信じていました。

『「世界」はなんのために存在するか、「人類」はなんのために存在するか、これは当分われわれがまったく気にすべきことではない。しかし君個人がなんのために存在するのか、これをみずから問いたまえ。』 - 反時代的考察(フリードリヒ・ニーチェ)

どうすることもできない過去に悩みながらも、永遠に戻ってきて欲しい。永遠回帰を欲する条件に、「よろこび」にありました。よろこびは「永遠回帰」を欲しています。よころびがあれば、この自分とこの世界に「また戻ってきて欲しい」と言うことができる。だから、よろこびを求めるように人間は努力しなければならない、というメッセージがひしひしと伝わってきます。バイアスが掛かっていて、訴える言葉の強さの背後にはかならず弱さがあるように、ニーチェは間違いなくそういう力をもった哲学者だと思います。けれども、よろこびとは一体なんだろうか。ニーチェは、自分の内側からよろこびを探るような内側からの励ましに原理を置いています。すなわち、人間が大きくなることの原理を提案していました。

ニーチェの哲学は、ナチスにも利用されていたとの噂もあるほど、自己保存・自己増大の多様性のなかでも本質的に通ずる「哲学」「道徳」「宗教」「芸術」「文化」を主体としたアフォリズムで構成されていたことが伺えます。善も悪もなく、エゴのぶつかり合いに留めて真向から否定しています。孤独で、不信に生きていたニーチェは、よろこびを見出せたのでしょうか?

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