村上春樹さん(@haruki_murakami)の書き下ろし長編小説「スプートニクの恋人」を読了しました。題名からも推察できるように、比喩らしき表現がとても印象的な一冊で、この小説は村上さん自身が語るように彼の文体の総決算として相応しい作品かと思われます。
スプートニクの恋人 (講談社文庫) | |
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地球を回遊している人工衛星のように人生という孤独のなかでは出会いは一瞬の交差でしかなく、そしてまた出会いがやってくる。登場人物の関係を軸に周囲のストーリーが描かれていて、それぞれの幻想が引き金となり美しくも残酷な不協和音が入り乱れています。無重力の広大な空間によって実感する孤独と、大切なものを失う喪失感。難解なテーマだけれども、四分休符のように一瞬の隙間で著者によって放たれる比喩が、作品として見事にバランスが保たれていると思いました。
「理解というものは、つねに誤解の総体に過ぎない。」- pp202
村上さんが描く世界は、現代のファンタジーです。