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UX戦略白書:「間違った」使えるものを増やさないために

 UX戦略のすべては経営戦略からはじまります。競合上の優位性を保つため、オペレーション・コストや開発コストを減らすため、またはモバイルなど各種デバイスにサービスを展開していくためなどその理由は様々です。

なぜUX戦略なのか。今回ご紹介する白書でも言及されていますが、本来であれば会社の経営は詳細なデザインやコーディング、その後のリリース作業まで関わっている必要があります。UX戦略が社内で確立されていなければ、いま着手しているデザインや開発はやがては「間違った使えるもの」として生み出されてしまう恐れがあります。

この白書では、エリック・シェイファー博士(Human Factors International の創設者兼CEO)がより戦略的な意思決定を可能にするためのUX戦略を、エンド・ユーザのモチベーション戦略を駆使してシームレスかつストレスフリーなクロス・チャネル戦略の観点から解説しています。エリック・シェイファー博士がUX戦略白書で述べているのは下記の3点です。

  • 何が顧客に動機を与えるのか、そのモチベーション戦略の重要性
  • 各種チャネルをユーザの生態系に合わせたクロス・チャネル戦略の設計
  • 「間違った使えるもの」をこれ以上増やさないためのUX戦略を浸透させる取り組み

『ユーザビリティの専門家はこれまで「間違った使えるもの」を設計する立場にいました。この疑問を経営レベルで議論しなければ、これからデザインしようとしているものがどう適応されるのかが理解されない状況に陥ってします。それはもはや悲劇です。』

原文「UX Strategy: Let's Stop Building Usable Wrong Things」を幅広い方々に読んでいただきたいことを目的に、日本語訳『UX戦略白書:「間違った」使えるものを増やさないために』を著者(Human Factors International)合意のもとに UXAnalytics Lab の若狭さんと共に公開しました。ぜひご覧ください。

UX Strategy Whitepaper / UX戦略白書:「間違った」使えるものを増やさないために by Kazumichi Sakata


UX戦略は様々な場で議論されています。5,000人以上のメンバーが所属する専用の LinkedIn グループが存在するほどです。このグループが発祥となり、今秋に世界初となるUX戦略に特化した UX Strategy Conference が開催されます。そんなコミュニティ内で多くの反響があったのはその他戦略との差異についてです。

わかりやすい図がありました。

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この記事の著者はUX戦略は事業戦略とプロダクト戦略をエンドユーザの観点から補完する役割を担っていると解説しています。UX戦略は、事業戦略の元となるビジョンを実現するためのプロダクトを共通理解を持って遂行していくために以下のような問いを投げかけ、「間違った使えるもの」を防ぐ役割を果たしてくれます。

Where are you now?

エンドユーザに届ける価値は何なのか、解決したい課題は何なのか、そして対象のプロダクトを届けることで実現したいことは何なのか。

Where do you want to be?

これからつくろうとしているプロダクトの目的を明確にし、どこに対してアプローチするのか。対象のプロダクトに対する正しい意思決定を補完する要素はどこにあるのか。エンドユーザとの接点をすべて洗い出し、対象のプロダクトがどう働きかけるのか。

How will you get there?

リリースしたあとも中長期的な改善試作はあるのか。検討している計画を要件として翻訳できているか。

How will you measure success?

対象のプロダクトが成功したと判断するための要素はなんなのか。それを測るための技法はなんなのか。

実態こそは見えませんが、エンド・ユーザが求めているのは高機能や高性能な単体のプロダクトではなく、そのプロダクトを利用することによって得られる総合的な「エクスペリエンス」なのですからサービス検討レベルないしは経営レベルからユーザエクスペリエンス・デザインを取り入れることはもはや必然だと考えます。

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