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“これも自分と認めざるを得ない”展

21_21 DESIGN SIGHT で本日より“これも自分と認めざるを得ない”展がスタートしました。今回の企画展のディレクターは NHK の「10本アニメ」や「ピタゴラスイッチ」などを手掛けるクリエイターの佐藤 雅彦さん

雅彦さんの頭の中を覗いたのは大学卒業時以来で、約4年ぶりになります。表現手法を研究する研究者でもあり、脳科学者の茂木 健一郎さんとも共同研究をされているのですが、表現方法論という講義で「新しい表現を生むための方法論」を学んだのを今でも覚えています。

これも自分と認めざるを得ない展

21_21 DESIGN SIGHT の企画展はほぼ毎回足を運ぶようにはしているのですが、今回の企画展は過去にも類を見ないほどの表現手法で来場者たちを楽しませてくれます。

キーワードは「属性」

雅彦さんが選定したキーワードは「属性」。「属性」という観点から属性に無頓着な自分と、それに執着する社会にフォーカスをあて、自分自身より自分のことを知っている社会との対話が楽しめます。人間の未来の可能性と危険性の両面を示していて、社会と自分との関係から自分は結局重要な存在ではなかった、と見つめ直すキッカケも与えてくれます。

指紋や身長といった身体的属性を例に取ってみると、これらは個人を特定することはできますが肉眼で見ると一見わかりません。物質である以上、人間には少なからず特徴が備わっていて、結果としてそれは社会的属性に直面しています。鉛筆の握り方や歩き方などのふるまいも人間固有の属性ではありますが、属性があるということはすなわち分類されるということ。当事者が気づかないうちに便宜的に分類されていることを本展を通じて体感できます。

しかしながら、基準も目的も当事者には不明(数年前に流行した「勝ち組」「負け組」もその一例。個人的にはなぜ勝ちなのか、負けなのかが未だに理解できていません)。その際に生じる表象に着眼点を置いた雅彦さんは流石だな、と同時に思います。

「自分は本当はこういう人に見られたかった」と本意に感じる時がありますが、実は「自分は他人からこう見えるのか」と思う自分と、驚くに違いはありません。他人と比較されたり、属性が可視化されることで初めて類似性や同一性もわかります。

展示会を見終わって、東京ミッドタウンの園内を歩いていると MIT メディアラボ教授・石井 裕さんの「出すぎた杭は誰にも打てない」という言葉が蘇ってきました。人間という社会的属性に分類されている以上、人は物質的にほぼ同じ属性を持っています。そんな環境下で自己表現・自己成長という言葉が至るところで唱えられているように、社会からはなんらかの価値を期待されています。同時に、私たちはそれに縛られているのだと思いました。

佐藤雅彦 「これも自分と認めざるをえない」
会場: 21_21 DESIGN SIGHT
スケジュール: 2010年07月16日 〜 2010年11月03日
住所: 〒107-0052 東京都港区赤坂9-7-6 (東京ミッドタウン内)
電話: 03-3475-2121

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