組織の新しいカタチ「Holacracy(ホラクラシー)」
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突然ですが、Holacracy(ホラクラシー)という言葉を耳にしたことはありますでしょうか?
日本ではまだ参考文献が少ないためご存知の方は少ないかもしれませんが、サービスデザインないしは組織デザインのための学習の一環として調査し、まとめてみました。
Wikipedia によると、ホラクラシーとは従来のようにトップダウンのヒエラルキーによって意思決定がなされるのではなく、組織全体に権限を分散させ意思決定させることで、自走する組織を保つための社会技術または組織のガバナンス・マネジメント方法*1と定義されています。
(c) All Rights Reserved.
企業、NPO問わず今ではアメリカを始めフランスやドイツ、オーストラリア、イギリスで導入実績があるとのことですが、有名なところでは Airbnb、Zappos、Medium が導入例として紹介されることが多く、日本でも一部記事によって紹介されています。
「ホラクラシーの下では意思決定機能が組織全体に広げられ、人々は役職ではなく役割を与えられる。伝統的な組織では、目標や目的、さらにタスクまでもが上から個々の担当者に流れていくものだ。我々のやり方では、マネージャーというのは基本的に世話役に過ぎない。マネージャーは、作業担当者の障害を取り除くために存在しているんだ」
「このホラクラシー、元はと言えばソフトウェア会社で開発のために考えられた、昔ながらの上から下に命令を下す形態を、「自律したサークル」のようなものに置き換えた形です。理論的には、このシステムを導入することにより、社員は会社の経営に関してより発言権を持つようになります。根本的には、ホラクラシーは、「人」中心ではなく、「やらなければならない仕事」を中心に、会社を組織するのが目的です。その結果、社員には肩書きが必要なくなったのです。社員は、明確な目的を持っていくつかの職務を担当します。1つのチームや部署で働くのではなく、大抵は複数のチームの一員として、それぞれの場所で特定の役割を果たします。」
ー「すべての階級を廃止」米Zappos社が導入した組織管理システム「ホラクラシー」は成功するか? | ライフハッカー[日本版]
なぜ、ホラクラシーなのか?
ホラクラシーの浸透によって、組織が本来どのように構造化されるべきか、どのように意思決定がなされるべきか、どのようなガバナンスレベルが行き届くべきかを改めて見直し、変化を受け入れる組織へシフトするきっかけが生まれると考えています。
いまではグーグルやマイクロソフトのような巨大企業で働く従業員も、企業が益々組織的になっていくことに嫌気が差し、スタートアップに転職するケースが増えていると聞きます。
(c) HolacracyOne, LLC
簡単にまとめると、ホラクラシーには4つの特徴があると言われています。
- 柔軟な組織
- 効率的な組織運営
- 役割の明確化
- 主体性の強化
ホラクラシーの歴史
2007年に Ternary Software とうソフトウェア会社の創設者である Brian Robertson 氏がまとめた公文書*2によって浸透したと言われており、元々の語源は1967年に Arthur Koestler 氏の著書「The Ghost in the Machine」で提唱されたホラーキー(holarchy)から来ており、ギリシャ語の holos(Whole / 全体)が由来となっている。ホラーキーは独立独行でありながらも全体の一部であるという認識のもと、全体を司る一部でありながらも独立した一部である、という双方の機能を保持していることを意味します。
ホラクラシーはイテレーティブ(反復)な組織運営や適応プロセス、自律組織などのキーワードで説明することができますが、その根底にはアジャイル開発やリーン生産方式の思想が根付いています。
ホラクラシーの主要原則
前述した Robertson氏がまとめた公文書は今では彼が所属する HolacracyOne の公文書として発表されておりますが、ここでホラクラシーの原則をいくつかご紹介したいと思います。
活発化する役割
ホラクラシーにおける組織構造の積み木となるのが、役割です。ホラクラシーには役割と、その役割を更に活発化させるための「エナジャイザー」の存在が不可欠であり、自身の言葉でキャパシティやポテンシャル、機能すべき役割や期待できる結果を表現できるように促さなければなりません。まるで上下がない、団体スポーツにおけるポジションのようです。
役割は、肩書きや職種のことではありません。ひとりが複数の役割を担うことも可能になるということです。参考までに、HolacracyOne の組織構造をこちらの公式サイトよりご覧ください。
(c) HolacracyOne, LLC
インタラクティブに各円型組織を閲覧できるようになっています。小さいひとつひとつの円が人です。詳細を確認すると、役割と決定権限がある内容の一覧等が組織内で明確になっていることが分かります。再度言及しますが、役割であり、肩書きや職種ではありません。そのため、複数の役割を保持している方が複数名か存在するものの、役割上の重複が見られないことが特徴です。
円型の構造
ホラクラシーにおける組織構造は、バラエティに富んだ役割が円型に集合して構成させる自律組織です。ひとりひとりが創造し、実行に移し、評価するためのプロセスを常に保てるようにしなければなりません。円型の組織では自身で組織運営に向けた会議を実施し、役割を新たに設け、メンバーを選発するなどの取り組みを自己責任のもと遂行っします。円型の組織ではひとりひとりの役割のリンクが重要です。
ガバナンス(統治)の強化
円型組織は複数存在する場合もあります。それぞれに生まれる円型組織では独自で定義すべき組織運営のためのガバナンスを周囲の役割や方針に従って定めていく必要があります。ホラクラシーではすべての円型組織を統合した意思決定の方法論を用いることで、多種多様なインプットをそれぞれの円型組織から自動でかつ効率的に入手できるようになります。
オペレーションプロセス
ホラクラシーにおける組織運営では、様々なオペレーション上のニーズに応えるべくそれぞれの円型組織のメンバーが自身の役割を果たすために効率的に、かつ協働的に運用されるべきです。そのため、会議においても意思決定権がひとりひとりに分散されているため、会議が効率的に開催されることが特徴として挙げられます。
(c) iStockphoto
ホラクラシーは未発達?
但し、ホラクラシーはいいことばかりではないようです。
昨年に独自のマネージメントやリーダシップ論を提唱している Steve Denning氏を発端とした反論*3も生まれてきています。そのひとつに、アジャイル開発やリーン生産方式をモチーフにしているホラクラシーモデルには顧客視点が不足していると指摘しています。
すでにホラクラシーを導入している有名企業のひとつに Zappos 社などがありますが、Zappos 社は創設時よりすでに顧客中心の組織であったが故に成功していると考え、顧客中心の発想が根付いていない組織には専属部隊の欠如により不向きなのではないか、と加えています。
あくまでもひとつの反論ですが、ホラクラシーの商標登録をしている HolocracyOne ではそれぞれの指摘に対する意思をブログで表明しています。また、既に導入している企業と連携することにより、未だ歴史が浅いホロクラシーの更なる進展を目指しているようです。
従来のマネジメント体系であるヒエラルキーとは異なり、ホラクラシーは市場変化が激しいIT特有のマネジメント体系かもしれませんが、引き続きウォッチしていきたいと思います。
関連記事:
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*1:Holacracy - Wikipedia, the free encyclopedia
*2:Robertson, Brian (June 2007). "Evolving Organization". Integral Leadership Review 7 (3).
優れたUXを実現するための人間中心デザインとは?
当記事は、2015年2月5日に無料動画のオンライン学習サイト - schoo WEB-campus(スクー)にて開催した授業「優れたUXを実現するための人間中心デザインとは?」のフォローアップになります。
当日の授業の内容は schoo の下記ウェブサイトよりご覧いただけます(会員登録が必要です)。
はじめに
当企画は schoo と弊社コンセントとの合同企画で「社会に求められる価値あるデザイナーとは?」というテーマのもと、著者含むコンセントのアートディレクターの佐藤とサービスデザイナーの大崎の3名でそれぞれの立場から1人づつ授業を開催してきました。
最終回となる今回は、以下のポイントを軸に人間中心デザインを題材としたモノづくりからコトづくりへの発想転換を背景に、いま社会に求められるデザイナー像を探っていきました。
① 美大卒だけがデザイナーとしての価値を発揮するとは限らない。
初回と前回の授業を担当した2人とは異なり、著者は美大を卒業しておらず特にビジュアルデザインにおける専門知識はほぼゼロに等しい状態でした。
但し、だからこそ「見える」デザインよりも「見えない」デザインを重視したアプローチやマインドセットを強化する姿勢を保つことができ、デザインをする立場からデザインを導く立場で振る舞うデザイナーとしての必要性を理解することができたと共に、デザイナーの新たな価値創出の場を見出すことができました。
結果として美大を卒業した方のみがデザイナーになれるという固定観念を取り払い、より多彩な専門家をデザインという土台に招き入れることができるのではないかと考えています。
② 正しくモノをつくろうとするのではなく、正しいモノをつくろう。
今回の題材となっている人間中心デザインというアプローチはあくまでも手段であり、目的ではありません。
人間中心デザインの根底にある思想や目的を理解することで、正しくモノをつくろうとする力よりも正しいモノをつくろうという力が働きやすくなります。
人間中心デザインは、正しいモノをつくるための「ものさし」として以降、解説していきます。
人間中心デザイン的思考回路
著者の社会人経験はIT企業のビジュアルデザイナー(見習い)からスタートしました。様々なウェブサイト上で露出される特定商品のバナー制作やその先のランディングページである特集ページのデザインやコーディングを担当していた時期です。
当時は Photoshop や Illustrator などの専用のソフトウェアを使い分け、限られた空間(サイズ、露出枠など)内で作業をすることに喜びを感じていましたが、少しづつ、ランディングページへの導線設計やランディングページそのものの設計範囲までを含めたコンテンツや機能設計に関心を持ち、ウェブディレクター職へと移りました。ウェブディレクター時代は制作の進行管理やサイトの簡単な情報アーキテクチャなどを担当しておりましたが、サービスそのものを抜本的に改善したいという想いが強まり、
「どのように」つくるか?から「なにを」つくるか?そして「なぜ」つくる必要があるのか?
と問い質すようになったことがきっかけでサービスデザイン領域からモノづくりに関わっていけるようなポジションに身を置くようになりました。
本当にユーザーから必要とされている、または正しいモノをつくるためには先ず誰のために、なぜつくるのか?を明確にしなければならない。
これは、ユーザーとの接点を担っているデザイナーだからこそ課題意識として認識できるのではないでしょうか?
この思想に辿り着いたのは学生時代に専攻していたユニバーサルデザインの提唱者であるドナルド・ノーマン博士の著書「誰のためのデザイン?」で言及された「ユーザー中心設計」との出会いでした。
「誰のためのデザイン?」が出版された1980年代以降、エンジニアリング領域からもヒューマンセントリックなモノづくりの重要性が主張されはじめ、1999年にISO 国際規格として「人間中心設計」が制定されました。
すべての人が使いやすく、という考え方は非合理的です。誰にとっても使いやすいプロダクトやサービスを目指せば、誰にとっても使いにくいモノになってしまう。
ユーザーの立場からも誰のためのプロダクトやサービスなのかが理解できず、自分ごと化できずに終わってしまう恐れがあります。だからこその人間中心デザイン改め人間中心設計なのです。
花とデザインと伝わる仕組み
「デザインとは、相手に花束を渡すようなものだ。」
ー中西 元男(PAOSグループ代表)
著者が学生時代に大変お世話になった、師匠の言葉です。人間中心設計はここで言う花束の届け方、つまりは「伝わるしくみ」を考える行為・プロセスそのものです。
「伝わるしくみ」を考えることは日常的に誰もが無意識に行っている行為です。例えば大切な方や友人にプレゼントを渡すシーンを想像してみてください。
- まず初めに、相手に伝えたい想いがあるはずです。例:ありがとう、ごめんなさい、付き合ってください、等
- (1) の想いを表現するために用いられるのがプレゼント(モノ)です。ここであなたは想いがより相手に伝わるためのプレゼントを、相手の性格や特徴を踏まえて選んでいることと思います。
- プレゼントが揃いましたら、想いを伝えるための方法を考えるはずです。いつ、どこで、どのように渡せば想いは伝わるのか、伝わるためのしくみをあなたは考えているはずです。
- 相手は受け取ったプレゼント(=想いを表す記号的役割を果たす)からあなたの想いを解読し、結果はどうであれ応えるはずです。
- あなたは相手の反応を待って、自分が用意したプレゼントはもちろん、伝えるためのしくみが正しかったか、伝わっていたかを評価し、次に活かそうとするはずです。
人間中心設計も全く同じ思考手順で進みます。
伝わるしくみを考える上で大事なポイントは2つあります。
- 伝えることと伝わることは別です。伝えることは手段であり、結果として伝わっているかどうかは評価しなければわかりません。伝えたことで満足してしまっては双方のコミュニケーションは成立しません。最も重要なのは、伝わることです。
相手に、ユーザーに、伝わったつもりではいませんか?
- 誰が、いつ、どこで、なにを、どうしたら伝わるのか?そもそもなぜ伝える必要があるのか?伝わるしくみを考える際のこれらのポイントは、お気づきの方もいるかもしれませんが「5W1H」と称される問題発見と問題解決と同じ思考のフレームワークを採用しています。
結論、人間中心設計の本質は問題発見と問題解決であると言えます。
人間中心設計は問題の解決策を探るだけではなく、解決したいそもそもの問題を探る行為・プロセスなのです。
結果として、人間中心設計を通じて問題発見力・問題解決力を養うことがができます。
ここでは8つのステップで解説していきました。
問題発見:
- データ分析
データ分析には3つの意図があります。過去からパータンを探る、いまを知る、未来を予測する。 - ファクト抽出
ユーザーを知るための情報を抽出していきます。不足があれば、定性調査等で補います。 - ユーザー定義
ユーザーが実在するかのように非言語情報として可視化し、周囲のイメージ強化を図ります。 - シナリオ定義
時間軸でユーザーの生活を把握します。問題が多く発生している箇所を解決することが本質的な問題発見・解決に至るとは限りません。
問題解決:
- 解決案作成
問題とその原因を特定後、5W1Hに習ってユーザーに伝える解決する方法を模索していきます。 - 構造定義
データやデバイス、ウェブサイトが全体の構造としてどのように調和していくべきなのかを考えます。 - 詳細設計
解決する方法を軸に、想いを伝えるための表現手段を考えます。 - 評価
事前・事後問わずユーザーに正しく伝わり、問題の解決に至ったかを検証します。
幸せの「ものさし」
言わずもがな、そもそもものさしとは長さを測るためにあります。
なぜ人々はものさしを用いるのか。
当たり前のことではありますが、ものさしを使わずに対象を見ただけでは長さの判断においてばらつきや歪みが生じ、不都合が生じてしまう恐れがあるためです。
デザインにも同じようなことが言えます。
チーム内で同じものさしで物事や事情を測らなければ、ばらつぎが生じ、確信をもって判断ができなくなってしまいます。そしてこの人間中心設計は、チーム共通のものさしとして機能します。
前述した、誰によって、いつ、どこで、どのように、そしてなぜ対象のプロダクトやサービスが使われているのか?を発見し、問題を特定することで以降の問題解決でも同様に、誰に、いつ、どこで、なにを、どうやって伝える(提供する)のか、そもそもなぜか、を共通の目盛として考えていきます。
人間中心設計はプロセスである、と説明しましたが必ずしもスタート地点がどの場合においても一緒とは限りません。場合によっては評価からはじめることもありますし、特に新規事業の場合は事前のデータなどがないため、仮説としてユーザーを定義したりします。
ポイントは、問題発見と問題解決で目的を明確に区別することで人間中心設計で陥りやすい手段の目的化から逃れることができます。
人間中心設計を参考にすることで、定量・定性の両方の側面から様々なプラスの効果を得ることができます。
資料に記載の数値的な結果と同様の効果を補償することはできませんが、ひとつ言えることは失敗はしません。チーム内で共通のものさしを設けることができれば、「正しいモノ」が測れるようになりチーム、そして組織を成功へと導いてくれます。
著者が過去に担当したサービスも、サイトリニューアルを通じてコンバージョン率がリニューアル後3ヶ月で平均54.2%(昨対比)も改善し、事業に大きく貢献しましたが、何よりも嬉しかったのはリニューアル後に事業の各スタッフがリニューアル中に定めたユーザーやシナリオが正しかったかを継続的に検証を進めていることでした。
人間中心設計の価値は定性的な側面による効果が大きく、対象の事業も同様の効果が見られた故だと考えています。
- チームメンバー全員が主体的にモノづくりに関わっていけた。
- ターゲットユーザーが共通言語として成立していた。
- ものさしとして機能し、機能開発の優先順位が明確になった。
- リリース後も継続的な改善を促すことができた。
- 全体スケジュールやコストを平均20〜25%短縮することができた。
「人間中心と言うからには、私は本当に人の幸せを考えらているのか、常に考えるようにしている。」
ー中埜 博(東京環境構造センター代表)
プロダクトやサービスは、ユーザーにとってその先にある目的やゴールを達成するためのひとつの通過点に過ぎません。
だからこそ、その先にあるユーザーの姿をも視野に入れ、自社のプロダクトやサービスがその人の幸せに向けてどのような役割を果たしているのか、を理解する必要があります。
人間中心設計または伝わるしくみを考えることは、想いを伝える先にいる相手の幸せを考えることだと思います。
そのためのものさしを、設けてみませんか?
まとめ
人間中心設計という名前こそ専門的な印象を受けますが、前述した「伝わるしくみ」に置き換えて考えることができれば、明日からでも実践することができます。
例えば、料理を食べさせてあげるときやメールをするとき、仕事場でプレゼンをするときなど、相手がいてこそ成立する日常のコミュニケーションに遭遇することがあれば、ぜひ、伝わるしくみの要領で想いを的確に相手に伝え、伝わるためのしくみづくりやコトづくりを意識してみてください。
そのように身の回りの日常から意識し、創造的に活動をすることでデザイナーでなくともデザイナー的思考のもと、人間本来誰しもが持っている創造力を取り戻し、そして育み、発揮することができます。
デザイナーには、「伝わるしくみ」のような無形の概念や言葉を形にできる、ないしは表現できる大きな強みがあります。
だからこそ、冒頭の正しいモノへと周囲を導くことができると信じています。
社会に求められるデザイナーとは?というテーマで人間中心設計という行為やプロセスを軸にデザイナーのあるべき姿や担うべき役割を述べさせていただきましたが、社会から一方的に求められるだけではなく「求めてもらえる」ようなデザイナーを目指すことが結果としてデザイナーの価値創出に繋がるのではないでしょうか?
おしらせ
いかがでしたでしょうか?
schoo と弊社コンセントとの合同企画で「社会に求められる価値あるデザイナーとは?」というテーマのもと計3回に渡り授業を開催してきましたが、みなさんからお寄せいただく質問や疑問にすべてお答えできなかったことが悔みです。
そこで来る2月25日(水)にクリエイティブスペース「amu」にて afterschoo、デザイナーのための放課後と題し、授業を担当した3名によるトークセッションとみなさまとのディスカッションの場を設けさせていただきました。
下記より申し込みいただけます。
ご都合が会いましたらぜひ、お気軽にご参加ください。オフラインでもお会いしましょう。
関連記事
Lean UX Quest in Tokyo at Lean Startup Update!! 2015
書籍『Lean UXーリーン思考によるユーザエクスペリエンス・デザイン』が刊行されて1年が経過しました。年明け1月に刊行されたこともあり、2014年を Lean UX と共に盛り上げていけるよう公私共に様々な冒険(クエスト)という名の活動を繰り広げてきました。Lean UX Quest と題し、これまでの取り組みを振り返ってみたいと思います。
尚、当記事は昨日開催された Lean Startup Update!! でお話させていただいた内容を基にしています。
STORY 1: PUBLIC
大変嬉しい事に、刊行直後には Lean UX の第一人者である Janice Fraser氏が来日し「Lean Startup マスターワークショップ」と題した1日ワークショップを実施しました。Janice氏は「Get Out of the Building!」思想をとても大切にされており、当日のワークショップも大半の時間を外で過ごすチームもいました。
仮想のサービスの立ち上げに際して事前にチーム内でリストを洗い出し、解消するための実験を介した顧客開発・顧客理解を主とし、得られた学びをチーム及びワークショップ参加者全員に共有することで実験の大切さ、学びの大切さを教えてくれました。
更にその3ヶ月後には『Lean UX』の著者である Jeff Gothelf氏が来日しました。Janice氏同様に1日ワークショップ形式で行われましたが、Jeff氏は仮説ステートメントの作成に重きを置き、より科学的な実験を行うためのフレームワークや方法を伝授してくれました。
We believe [This feature(機能)] for [this persona(ペルソナ)] will achieve [these outcomes(得られる効果)] by measuring [metrics/KPI(主要な指標/KPI)]
当日の内容はグラフィックレーコンディングとしても記録されているので、ぜひご覧になってみてください。
2014年3月6日にはGREEにて出版記念イベント『Lean UX が拓く最適なデザイン』を開催しました。企業規模や事業形態を問わず、3名のゲストスピーカーをお招きし最適なデザインを実現する際に求められるデザイニング・カルチャーの重要性やそのカルチャーをつくる上でのポイントを Lean UX を基点にディスカッションを行いました。
当日はなんと400名を越える方にご参加いただき、大成功に終わりました。ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。
STORY 2: PRIVATE
Janice Fraser氏と Jeff Gothelf氏。このお二人に来日していただけたことはとても貴重な機会であり、多くの学びを得ることが出来ました。「考える」と「つくる」。それぞれに重きを置いたお二人のワーク内容を参考に、2014年下期では計6社にお邪魔してプライベートなワークショップやパイロットプロジェクトをご一緒させていただきました。
特に印象的であったのは Yahoo! JAPAN 様でのワークショップでした。一部のカンパニーの約半数の社員、約300名を対象としたワークショップを計17回に別けて実施し、Lean UX の社内浸透を担当の方と一緒に検討を進めてきました。様々な方から貴重なご意見等をいただくことができ、本書に習い様々な試行錯誤を繰り返して行きました。
ワークショップでは Lean Analytics でも言及されている CPS 仮説検証モデルに従い、担当されているサービスの顧客情報やサービスの要素を書き出していただくことで、実証するための軸設定を主としました。
- 思い浮かべている顧客は本当に実在するのか?
- 対象の顧客が抱えている問題は実在するのか?
- その問題に対して対象のサービスは解決に繋がっているのか?
などの思い込みを排除し、実証に繋げることが目的です。ワークでは前述した Janice氏や Jeff氏の教えを参考にプロトペルソナやシックスアップスケッチ*1を取り入れ、Lean Startup に UX のエッセンスを加えた文字通り Lean UX の実践に務めました。
リーンキャンバスなどを用いて関係者間の認識を統一するためには、情報の非言語(ノンバーバル)表現が有効です。例えば30代主婦をサービスのターゲット・セグメントとした場合でも、ひとりひとりが思い浮かべる30代主婦は異なるはずです。どこに住んでいるのか?子供はいるのか?子供とどのような生活をおくっているのか?自分時間をどのように有効活用しているか?など言語的情報では分かり得ない情報をよりフォーカスすることで発見することができ、共通言語化すると共に言語表現では見えてこない潜在的欲求を探求することができると考えています。
ワークショップにおける最終的なゴールは実際の現場に応用し、即実行できる状態をつくりあげることでした。そのために CPS の軸に従った実証を進めるための MVP の設計や検証方法を指定の時間軸に従って整理していきました。この場合は2日、2週間、2ヶ月という制限を設けることによってアイディアの散乱を防ぐことを念頭に置きました。
最後にワークショップ以外にも実際に新規サービスの現場に応用すべく共同でパイロットプロジェクトを進めている企業様もいます。まだ実験中ですので半年後には良いご報告ができるのではないかと個人的には思っています。
なぜ Lean UX なのか?
著者が Lean UX を推奨する理由は大きく別けて4つあります。
- どのようにつくるかではなく、どのようなものをつくるかにフォーカスしたマインドセットを養うことができる。
- 問題解決よりも問題の発見と定義に重きを置くことでサービス価値の最大化に貢献できる。問題解決(サービス)の質は、定義している問題の質と比例していると考えています。
- 透明性を維持し、共創文化を醸成する。本来のモノづくりはどうあるべきなのか?Lean UX を実践することによってその問いの重要性に気付かされます。
- ユーザーのみならず、メンバーからの学びを大切にする。人数の分だけ学びは存在すると考えます。
STORY 3: LEAN UX CIRCLE
Lean UX は組織文化をデザインすることと等しいと考えます。そのため、組織への浸透は容易ではありません。共創を組織内だけに留めず、社会全体の共創を促す場として本書『Lean UX』を基点に Lean UX を浸透・実践・普及させるための有志による団体「Lean UX Circle」を2014年夏に立ち上げました。
今では88名のメンバーが在籍し、Lean UX に関する様々な問題を解決する場として月1の頻度でクローズドな環境下で活動をしています。
Lean UX Circle の活動も Lean Startup / Lean UX の要領で改善を重ねてきました。参加されているメンバーの解決したい問題を軸に集まったメンバーで発想・創造を繰り返し、アイディアをテストした結果を月1の活動で共有することで、学びを促進する Build-Measure-Learn(Think-Make-Check)を体現しています。
活動開始から約半年が経過し、2015年3月の最終報告会に向けて追い込み期間に突入しています。以降の活動については未定ですが、2015年も冒険は続けます。ご興味がある方がいらっしゃればお気軽にご連絡ください。
正しくモノをつくろうとするのではなく、正しいモノをつくろう。
最後に、他の登壇者のプレゼンテーションも非常に刺激的な内容でしたのでご紹介します。
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TOCから俯瞰するリーンスタートアップ(河合 太郎氏)
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LEANSTARTUPの現場 #leanstartup(黒田 樹氏)
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実録!現場におけるLeanStartupの実践(冨山 香織氏)
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人間と話す: Lean Customer Development (Lean Startup Update 2015)(馬田 隆明氏)