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Design dot BEENOS 始動

BEENOS という「Startup Studio」をテーマにした、日本をはじめ、北米・インド・トルコなど7カ国80社以上に投資し、ウェブにおけるエンジニアリング・デザイン・マーケティング・マネジメント・データ解析に関する支援や育成プログラムを実施している会社のデザインチームと共同で、新企画をはじめました。

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その名もDesign dot BEENOSです。主催者のひとりである山本 郁也氏は言います。

特にスタートアップ業界に至ってはデザイナーの人口が少なく、加えて肩身の狭い思いをし、本来であればビジネスと密接に関わるが故にデザイナーとしての価値の発揮に最も適している環境にも関わらず、多くの悩みや課題を抱えているのではないかと思うことがあります。

海を渡れば、そこは歴史上で最も多くのデザイナー達が意味あるインパクトを生むためにスタートアップへと転身し、EtsyPinterestSquareAirbnb といった今話題のスタートアップの創業者ないしは共同創業者として活躍しています。

彼らのように、デザイナーはセルフプロデュース力が高く存在感を示せるものの、特に日本においては社会的にまだ本当の価値が見出されていないのではないでしょうか?日本のデザイナーは世界的にみてもレベルは決して劣っていないのですが、業務範囲が制限されることでその可能性が引き出せずにいます。

結果としてデザイナーとしての労働対価に見合わない仕事のみを担当するようになってしまい、デザイナーないしはデザインそのものの存在感が薄れてしまいます。

デザインコミュニティの形成と、その先の未来をより良くしたいという BEENOS のビジョンに共感し、主催者のひとりとして定期的にウェブ業界に身を置くデザイナーの方をゲストとしてお招きし、デザイナーの存在意義やその価値について再確認する場(イベント)を開催していく予定です。やがてはウェブ業界に留まらず、様々なひとの「Design dot (You)」を引き出せればと考えています。

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「UX Japan Forum 2014」を開催します

全国各地の UX コミュニティーが集結する真夏の HCD/UXD イベントUX Japan Forum 2014が7月20日(日)に開催されます。

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モノやサービス、情報が溢れかえっている時代において、あらゆる業種や業界で HCD/UXD の重要性が語られています。個人の経験や一企業の取り組みだけでは、なかなか知見を積み重ねることは難しく、HCD/UXD を社内ないしは社会で推進する上で様々な課題に直面することが多々あります。

同じような取り組みが実際多くの企業または人たちの間で行われていると思います。ただし問題は、似たようなことが行われていたとしても必ずしも体系的ではないために途中で挫折してしまったり、実践者の我流で行われていたために、他の人には理解できずに社内で広がらなくなっていたと思います。

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UX Japan Forum 2014 では、そんな現在の日本国内における HCD/UXD のこれまでとこれからについて、暗黙知を形式知化にして共有化を進めるために参加者のみなさんと語り、追求していきたいと、日本の各地で HCD/UXD を学び、推進している有志が集まり企画しました。第1回となる今回は、「栄 UX」が運営主体となり、愛知県は名古屋市で開催されます。

ぼくもその内の1人として、東京を中心に活動しているインターネット・メディア企業でユーザエクスペリエンス設計業務を担当する人が集うコミュニティーShibuya UX、そして次代のより良いデジタルインフラ構築に貢献する知のネットワークを構築し活性化することをミッションに掲げ、活動しているUX Tokyoの主宰者として関わらせていただいています。

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当日には「ユーザエクスペリエンス・デザインの破壊と再生」と題したセッションを担当します。同じく UX Tokyo の山本 郁也氏と共に Web 業界における HCD/UXD の既成概念を打ち破り、本当のユーザエクスペリエンスを考える場合に今後求められるであろう視点やスキル、マインドセットについてサービスデザイン事例を基に参加者のみなさんと一緒に考えていきたいと思います。

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ほかにも HCD-Net 理事/千葉工大の山崎教授をお招きし、「UX思考」をテーマとした話題提供をいただきます。イベント当日では全国各地から集まる UX コミュニティーの代表者や参加者のみなさんとの交流を通じて日本全土における HCD/UXD への共通理解を構築していければと考えています。

日時:2014年7月20日(日)
会場:トライデントコンピュータ専門学校(愛知県名古屋市)
参加枠:100名
参加費:3,000円(当日支払い)
主催:UX Japan Forum 2014 運営委員会
後援:NPO法人 人間中心設計推進機構(HCD-Net)
協賛:株式会社アクアリング学校法人 河合塾学園 トライデントコンピュータ専門学校株式会社イークリエイト

ぜひ、奮ってご参加ください。

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Code for Namie ー 「考える」と「つくる」

東日本大震災による東京電力福島第一原発力発電所事故の影響により今尚全町避難が続く福島県浪江町。今年度に全町民に対してタブレット端末を配布する事業を予定している浪江町の支援の一環として開催された、浪江町住民のタブレット活用を考えるハッカソンCode for Namie(浪江町 Code for Japan)が今週末に開催されました。

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((c) Code for Namie)

ふるさとである浪江町を離れ、物理的にバラバラになってしまった地域の絆を再生するために、タブレット端末をどう使えるか。情報格差が著しい浪江町の町民に対してどのような情報や機能を提供すべきなのか。

Code for Namie ではこれまで僕が携わってきたハッカソンとは異なり、計6回のアイディアソンを開催し、のべ420名が参加し、創りだされた770ものアイディアを16種類に分類し、内7つのアイディアを今週末に開催されたハッカソンで形にしていきました。通常はアイディアソン / ハッカソンそれぞれ1回づつ開催されることが多いため、驚きました。

その昔、アインシュタインは言いました。

"If I had only one hour to save the world, I would spend fifty-five minutes defining the problem, and only five minutes finding the solution."

(もし、地球が滅びそうな状況になって助かる方法を考えるのに1時間あるとしたら、私は最初の55分で問題を理解し、問題がどういったものであるかを適切に定義することに費やすだろう。そして残りの5分で、その答えを考えるだろう。)

今回のハッカソンも、その通りだと言えます。

それだけではありません。自治体が発行している浪江町の住民意識調査の報告書や避難状況をはじめとする、タブレット事業の導入に向けた江町の現状と課題を、浪江町役場の方々のご協力により事前インプットとして参加者に提供されました。

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((c) Code for Namie)

また、どんな人が、どんな生活を送っているのか?被災前と比較してどのように生活が変わったのか?どのようなことに困っているのか?こういった事柄に具体的イメージを持つために仮想ユーザーであるペルソナが、実データを基に成形されています。

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((c) Code for Namie)

そして、浪江町をはじめとるす福島の復興に関する話題が会ごとに提供され、繰り返し開催されるアイディアソンのアウトプットの質の向上に寄与しています。7つに絞られたアイディアは、ハッカソン最終日に実際に町民の方々の前でタブレット端末内で動くアプリケーションとしてデモンストレーションを行い、最も票を集めたアイディアはその後、民間企業と連携し今年度中に製品化され、配布されます。ぼくはメンターのひとりとして、アイディアの具現化を支援させていただきました。

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((c) Code for Namie)

利用者との交流

Code for Namie では実際にアプリケーションを利用する立場となる町民の方々による審査が設けられたことが素晴らしいと思いました。その後、デモンストレーションを終えた各チームのテーブルを周り、アプリケーションをタッチ&トライして実際の利用イメージを持っていただくような時間も設けられていましたが、アプリケーションの良し悪しを最終評価するのは利用者なのです。

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((c) Code for Namie)

被災者が抱える課題の解決に向けたアイディアが優れていると自身で思っていても、答えは利用者のみが知っています。利用者との交流はもちろん、フィードバックがなければ自己満足で終わってしまいます。そのような事態を回避するためにも、全国各地で開催されているすべてのアイディアソン / ハッカソンはつくる側の人間と、つかう側の人間の距離をもっと縮めていくべきです。

何のためのアイディアソン / ハッカソンなのか?いまいちど問いなおす必要があるのではないでしょうか。

伝える&伝わる仕組みづくり

イベント最後の総括でもお話させていただきましたが、ぼくは参加者のみなさんと、その素晴らしいアイディア(アプリケーション)の魅力を確実に利用者に伝えるための仕組みづくりを未熟ながらも支援させていただきました。

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((c) Code for Namie)

デモンストレーションでは町民の方々にそのアプリケーションの魅力をちゃんと伝えることができましたでしょうか?また、ちゃんと伝わっていましたでしょうか?実装した機能に対してではなく、そのものの価値について共感していただけたでしょうか?

いくらアイディアや具現化されたアプリケーションが優れていても、その魅力が利用者に伝わっていなければ全く意味がありません

どのように伝えるべきか?どうしたら伝わるのか?伝わる仕組みを考えることは決して簡単なことではありませんが、日常のコミュニケーションから意識可能な内容です。

まとめ

アイディアソンでアイディアを生み出し、ハッカソンで創る。すっかりと定着してしまったこの構図について疑問が残ります。開発プロセスを単純にまとめると「考える」と「つくる」に別けることができますが、昨今のアジャイル開発や、当ブログでも何度も解説している LeanUX などの浸透に伴い、「考える」と「つくる」距離は除々に縮まってきています。双方の境目がなくなってきている、と言い換えることができるかもしれません。前述のアインシュタインの言葉のとおり、「考える」ためには「つくる」必要があり、「つくる」ためには「考える」必要があります。 

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((c) Peter Morville)

つまり、現代のアイディアソン / ハッカソンは同一の作業内で完結させるべきではないでしょうか。時間的制約はあるものの、「考える」を専門とする参加者と「つくる」を専門とする参加者を別けることで、創りだされたアイディアの裏にある背景が引き継がれにくいといった事態に陥りやすくなります。

また、今回のハッカソンでも事前に選定されたアイディアそのものがソリューションを限定してしまうような示唆が含まれているものがありました。アイディアソン / ハッカソンにも LeanUX マインドを浸透させるべく、引き続きいち参加者としてもハッカソンイベントに足を運びたいと思います。

最後に、こんな僕をメンターとしてお招きいただいた運営スタッフのみなさま、ありがとうございました!

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