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Lean UX Tokyo:『LEAN UX』の著者、Jeff Gothelf 氏による実践型ワークショップを開催します

『Lean UX』の邦訳版が刊行されてから早2ヶ月が経過しようとしています。以降、国内でも Lean UX に対する注目度が高まり、これまでに数多くのワークショップや勉強会が開催されてきました。

今回はその『Lean UX』の著者である Neo Innovation の Jeff Gothelf氏が日本で初めて1日ワークショップを開催します。Lean UX とは何なのか、また Lean UX を実践するために必要なマインドセットについて、複数のハンズオンを通してJeff 本人がレクチャーしてくださいます。

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((c) 『LEAN UX』の著者、Jeff Gothelf 氏による実践型ワークショップ)

開催概要

日 時:2014年5月13日(火) 9:00(8:30受付開始)〜 17:00 
場 所:〒150-0022 東京都渋谷区恵比寿南3-5-7 代官山DGビル 9F
参加費:29,000円 ※5名以上の申し込みで1人あたり23,000円(ランチと邦訳版書籍『LEAN UX』が含まれます)
主 催:Neo Innovation、株式会社グッドパッチ
協 力:株式会社デジタルガレージ

今回のワークショップを通して学べること:

  • チームで前提を共有し、共通の出発点を持つ方法
  • 前提を評価するための仮説ステートメント作成
  • プロダクトの開発、デザインにおける無駄を最小限にする
  • 難しいデザインの課題をチームでコラボレーションし解決する
  • アジャイル開発環境で成功できるようにチームをセットアップする

Jeff はこれまでに LeanUX NYC ConferenceSXSW でもスピーカーやワークショップを務め、世界各地で高い評価を得てきました。今回はその Jeff から直接学べる貴重な機会でもあります。私もゲストとして登壇を予定しておりますので、ぜひ皆様お誘い合わせの上ご参加ください。

タイムテーブル
09:00 - 09:15 イントロダクション & アイスブレイク
09:15 - 10:30 リーンUXについて
10:30 - 10:45 休憩
10:45 - 12:00 チームで前提を共有
12:00 - 13:00 ランチ
13:00 - 14:30 仮説ステートメントの作成
14:30 - 14:45 休憩
14:45 - 16:30 デザインの実験
16:30 - 17:00 Q&A 振り返り
申し込みページ

Designing Culture with Lean UX〜ルールではなく文化をつくる〜

160回目となる DevLOVE にお招きいただき、Theatre Cybird という素敵な会場をお借りしてセッション「Lean UX: Designing Culture〜ルールではなく文化をつくる〜」を昨日の夜、開催しました。(過去に DevLOVE で担当させていただいたセッション:素晴らしい体験は、素晴らしい組織からーサービスデザインとエンタープライズ・アーキテクチャ

当日参加された Takeshi Arai さんがご自身のブログに詳細のレポートをまとめてくださいました。ありがとうございます。

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((c) DevLOVE. This work is licensed under a Creative Commons Attribution-NonCommercial 3.0 Unported License)

偉そうなことは決して言えませんが「もしユーザエクスペリエンスの設計担当者がドラッカーの『マネジメント』を読んだら」でもご紹介したように、監訳させていただいた「Lean UXーリーン思考によるユーザエクスペリエンス・デザイン」の根底にあるコンセプトは50年以上も前に出版された、ドラッカーの「マネジメント」で提唱されているマネジメント手法 MBO(Management by Objectives:目標による管理)と類似していることがわかりました。

『MBO とは、組織のマネジメント手法の1つで、個々の担当者に自らの業務目標を設定、申告させ、その進捗や実行を各人が自ら主体的に管理する手法。1950年代に米国のピーター・ドラッカーが提唱したとされる。本人の自主性に任せることで、主体性が発揮されて結果として大きな成果が得られるという人間観/組織観に基づくもの。』ー Wikipediaより

Lean UX は無駄を無くすことが目的ではありません。リーン・ボディという表現があるように、目指しているのは筋肉質な(企業)体質とその維持にあります。

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(....Tim via Compfight cc)

一般的にダイエットを成功させるためには、半強制的な食事制限を自身に課すのではなく、生活習慣の見直しが求められていると思います。そしてこの生活習慣を企業にあてはめると、企業文化に相当します。企業文化を見直すことで、結果としては無駄が省かれるようになります。繰り返しますが、Lean UX の目的は無駄を省くことではありません。

特に IT 業界に至っては、企業文化の見直しが早急に求められているのではないかと考えます。なぜなら、IT 業界の変化は恐ろしいほどに速いからです。Web 2.0 という2000年代中頃以降における、ウェブの新しい利用法を指す流行語から始まり、近年ではモバイルやタブレットなどの情報取得チャネル数がここ数年で何倍にも膨れ上がっています。そして、企業に至っては企業価値が2倍になったり半分になったり、倒産する企業もあれば新たに資金調達を成功させる企業のニュースが毎日のように届けられます。

そんな競争社会に、我々はいま生きています。

つまり、これからの IT 企業は

  • サービスとして成し遂げなければならないことはなにか
  • それを成し遂げられなければいけない企業はどうあるべきか

を追求しなければならないのではないでしょうか。この本質を突き詰め、大体的な組織改革を進めている企業がいます。

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米国の Yahoo! です。同社の CEO として2年ほど前に就任したマリッサ・メイヤー氏は物理的に場所を共有するように従業員に命じました。一部社員から反感を買っていましたが、結果としてひとつの Yahoo! となり、株価も就任時より1年で74%も改善しました。Yahoo! の歴代 CEO と比較してもトップだそうです。

世の中は、オフィスに束縛されず、IT を最大限に活用してノマド的な働き方の方向に向かっていますが、協力的にかつランダムにアイデイアをぶつけあう環境を構築することで、「三人寄れば文殊の知恵」という日本古来のことわざにもあるように、素晴らしいアイディアが生まれやすくなったと彼女は話します。

生産性よりも創造性を優先し、企業文化の再編に成功した Yahoo! のように、企業の本質は「文化」だと思います。企業文化をデザインする。これこそが正に Lean UX が目指している世界でもあります。

企業文化の再編に挑むことは決して容易ではありません。特に長い歴史を有している企業に至っては影響範囲が大きく、世界で100年以上の歴史を有する企業の約半数が日本企業であることから、変化を受け入れ難いことは確かです。それでも、僕はこのタイミングで Lean UX が日本に少しづつ浸透していることを大変嬉しく思っています。なぜなら、Lean UX は企業が潜在的に抱えている課題を表面化し、本来のモノづくりないしはコトづくりのあるべき姿を追求させてくれる取っ掛かりになると考えているからです。

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言い訳ではありませんが、Lean UX は「銀の弾丸(silver bullet)」でも、「万能薬(panacea)」でもありません。Lean UX は、マネジメントであり、手法でもあり、マインドセットでもあります。故に、こうすべきである/こうでなければならない、などのルールのような縛りは与えられていません。

これまで当ブログで繰り返しご紹介していることを心掛けて取り組んでいければ、本書で紹介されている文化に一歩一歩確実に、かつ自然に近づいていくのではと考えています。


僕はまだ未熟者ですが、読者の方々と一緒に本来のモノづくりないしはコトづくりを実現するための企業文化の醸成に向けて、前に進んでいきたいと思っています。

関連エントリー:

Lean Startup マスターワークショップ

このブログでも何度かご紹介している LUXr の Janiceさんが再び来日され、Digital Garage にて「1日 Lean Startup マスターワークショップ」を開催しました。2年前に同じく Digital Garage で開催した「実践的 User Experience ワークショップ」よりもより「前提条件の特定と仮説の設定方法」及び「Get out of the building を通じた実験」に重きを置いた、素晴らしいワークショップでした。僕もゲストとしてお招きいただき、彼女のワークショップのお手伝いをさせていただきました。

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(This work is licensed under a Creative Commons Attribution-NonCommercial 3.0 Unported License)

圧巻だったのは、ワークショップの進め方です。15年以上に渡る彼女のキャリアと、アメリカはシリコンバレーで培った様々な手法を織り交ぜることで Lean Startup の根底にあるマインドセットを体得できるようなプログラム構成となっていました。

簡単に捨てられるほどアイディアを出すことに余裕ができる

朝早かったこともあり、先ずは準備体操として3人1組のチーム*1に別れ、今晩に食べたい夕食のアイディアを10個洗い出していただきました。ハンバーグ、スパゲッティ、お好み焼き…などなどバラエティ豊かなメニューが並び、書き終えたら10個のアイディアを「残したい」アイディアと「妥協してもよい」アイディアの2つのセットに別け、後者を隣人に渡してもらいます。

そして、そのアイディアを破ってもらいます。

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(This work is licensed under a Creative Commons Attribution-NonCommercial 3.0 Unported License)

Janice さんは問いかけます。

なぜ、破る必要があったのでしょうか?答えは簡単です。妥協してもよいアイディアは、捨てるべきなのです。

ポストイットにアイディアを記載することがポイントでもあるのですが、気軽に動かしたり、破ることができるからこそ、自由度の高いアイディアは生まれていきます。ただ、いざ捨てるとなると、ヒトはどうしても「もったいない」や「もしかしたらあとで必要になるかもしれない」といった保守的な言動に駆られてしまいます。では隣人に破ってもらえれば良い。

Janice さんは、無駄となるアイディアを捨て、前に進む勇気をワークショップを通じて体験させてくれました。

顧客からの学び以上にチームからの学びに価値がある

お昼休みを挟み、午後に向けて参加者には Janice さんからお題が出されます。自身が考えた仮想サービスの概要を共有し、既に何百万もの出資を受けているアイディアであることを条件に、各チームにはその会社の CEO であることを認識させ、その会社ないしはサービスが破綻してしまう可能性がある「最も危険な前提条件」を洗い出していただきました。

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(This work is licensed under a Creative Commons Attribution-NonCommercial 3.0 Unported License)

  • そもそも◯◯を必要とするユーザーがいない。
  • ◯◯の金額設定にユーザーは投資してくれない。

例として挙げたこれらの前提条件を検証するために、各チームは文字通り Get out of the building します。これは、Lean Startup Machine Tokyo でも行われる全く同じアプローチです。そもそも前提となっているターゲットユーザーもチームによって異なるため、インタビュー内容が異なればその後にピボットするアイディアの方向性もバラバラです。

そのため、顧客から学んだことはチームごとに異なります。

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(This work is licensed under a Creative Commons Attribution-NonCommercial 3.0 Unported License)

ここで Janice さんは「Fish Bowl」という手法を取り入れ、各チームが顧客から学んだことを参加者全員に発表してもらうようにしました。「Fish Bowl」とは大人数を対象としたディスカッションの場でよく用いられるアメリカ発祥のワークショップ形式で、先ずはボランティアで任意のチームから1名づつ、計3名に前に来てもらい、学んだことを共有し、議論してもらいます。Fish Bowl、つまりは金魚鉢を眺めるかのように3名のダイアログを聞いて関連する学びを共有したい、または質問がしたいと思ったヒトは、前に来てもらい誰か1名と入れ替えで席に座りダイアログを続けてもらいます。

結果として顧客からの学びはチームの壁を乗り越え、同じサービスを検討しているワークショップの参加者全員に行き渡り、チームの構成人数以上の学びを得ることができました。

実験の方法論は2時間/2日/2ヶ月内におさめる

1回目の実験を終え、顧客から、そしてメンバーからの学びを参考に2回目の実験を次に設計していきます。ここで Janice さんから条件が与えられます。これから設計する2回目の実験は、期間を2時間/2日/2ヶ月内に設定し、それぞれの期間に見合った実験を設計するように言われます。

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(This work is licensed under a Creative Commons Attribution-NonCommercial 3.0 Unported License)

なぜでしょうか。

Lean Startup は不確実性が高い状況下で新規のサービスないしはプロダクトを構築するためのアプローチです。不確実性が高い状況下でも適切な実験が行えるよう、様々なパターンを想定することが大切です。

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(This work is licensed under a Creative Commons Attribution-NonCommercial 3.0 Unported License)

また、複数の軸を設定することで相対的に比較することができ、目的や手段、内容に奥行きが生まれ、実験のためのアイディアが生まれやすくなります。2時間しか時間が与えられていないのであれば、初回同様に顧客インタビューを実施することが可能です。2日であれば MVP を定め、プロトタイプを作成し、より正確なフィードバックを対象の顧客から得ることができます。2ヶ月もあればβ版としてクローズドでサービスを開始することも視野に入れられるかもしれません。

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(This work is licensed under a Creative Commons Attribution-NonCommercial 3.0 Unported License)

上記内容を網羅したワークショップの開催は、Janice さんにとってまだ2回目だったようです。正に、このワークショップそのものが彼女自身の実験だったのかもしれません。このワークショップで得られた学びこそ、「学びのエンジン」として組織に根付かせていく必要があると思いました。

関連エントリー:

*1:Janice さんは3人1組で構成される、Balanced Team を推奨されています。人数が4人以上になるとメンバー間のコミュニケーション回数が倍増してしまうからです。3名でそれぞれ握手をすれば3回で済みますが、4名に増えればその回数は2倍の6回となります。

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